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プロ野球

16年ぶりリーグV逃すも「秋の失速」を克服した阪神。下克上日本一へ向けて“カギ”となるのは?

チャリコ遠藤

2021.10.30

前半戦では驚異のパワーを見せつけていた佐藤だが、後半戦に入ってからは極度のスランプに陥った。写真:滝川敏之

前半戦では驚異のパワーを見せつけていた佐藤だが、後半戦に入ってからは極度のスランプに陥った。写真:滝川敏之

 10月26日、終戦の事実も相まって甲子園には冷たく重い風が吹いていた。ヤクルトの高津臣吾監督が横浜スタジアムで宙に舞った直後、阪神タイガースの矢野燿大監督はファンの前に立っていた。

「10月に入り、選手たちは本当にすごい粘りを見せてくれました。しかし、僕たちが目指しているところは、ここではありません。今日の最後の試合、こういう試合で勝ちきれる、もっともっと良いチームに、強いチームになっていけるよう、新たなスタートとして、この悔しさを持って戦っていきます」

 文字通り最後の1試合まで行方の分からない2021年のペナントレースも、タイガースに刻まれたのは「V逸」という辛く厳しい2文字だった。
 
 一時は2位に7ゲーム差を付けて走ったが、猛追してきた巨人に一度は抜かれ、最後はヤクルトに競り負けた。しかし、それが「大失速」だったと言われれば意味合いは違う。

 事実、10月は12勝5敗3分と大きく勝ち越し、9月と合わせて5つ負け越した夏場(7、8月)の失速から盛り返して貯金を8個増やした。近年で多かった「秋の失速」とは無縁。それ以上に優勝したヤクルトが勝ち続け、僅差のゲームを落とさず引き分けに持ち込んだ。

 むしろ、投手陣こそ大崩れしなかったがドミノ倒しのように不振が連鎖した中心打者を抱えるなかで、踏みとどまった印象の方が強い。井上一樹ヘッドコーチの「ベストメンバーが組めない中で粘って、粘ってという形でやってきた」の言葉は本音だろう。主軸が精彩を欠く中で、島田海吏など若手がしびれる優勝戦線を経験した副産物はあれど、指揮官も苦しい状況だったことを否定しなかった。

「(終盤は)チーム状態的には良くなかったんで。特にバッター陣みんな調子が下がっていたし、スタメン組むのもちょっとどうかなという感じになっていた。なかなか点が取れないというのが長かった」

“進撃の立役者”がその反動を受けるかのように下降線を辿り続けた。象徴的なのは、開幕からアーチを量産し続けたルーキー佐藤輝明の急停止。10月24日の広島戦で放った本塁打が実に66日ぶりで、後半戦は59打席無安打を経験するなど、打率.158、4本塁打と沈黙した。前半戦は多くあった“佐藤で勝った”試合が後半戦は激減したのだ。
 
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