MLB

春先に噴出した懐疑論を一蹴した「投手・大谷翔平」の凄み。大投手スモルツが「ここから」と熱弁した成長への期待

THE DIGEST編集部

2021.11.09

気迫のこもった投球で1シーズンを“投げ切った”大谷。圧巻のピッチングだったが、春先は懐疑的な声も少なくなかった。(C)Getty Images

 MLBでは1903年のジャック・ダンリービー(セントルイス・カーディナルス)以来、史上3人目となるレギュラーシーズンでの"リアル二刀流"をやってのけた大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、開幕前に不安視されたピッチングも見事にやりきった。
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 もっとも開幕前の「投手・大谷」には、むしろ懐疑的な声の方が多かった。春先のオープン戦で10回と1/3を投げて被安打15、14失点と打ち込まれたからである。加えて二刀流での負担が未知数だったこの時期の大谷には、常に「健康であれば」や「ケガなく戦えたなら」という意見も絶えなかった。

 一連の批判的な意見の極論とも言えたのが、元メジャーリーガーのビル・リプケン氏のコメントだった。90年代初頭にオリオールズで活躍し、あの"鉄人"カル・リプケンJr.の弟としても知られる同氏は、4月にMLBの公式番組『MLB Tonight』で「オオタニにとっても楽な道になる」とクローザー転向を進言したのである。

「防御率もよろしくないし、楽観視できるものじゃないね。メジャーで先発として成功するのは簡単じゃない。それはDHも同じこと。成功するには多くの努力がいる。でも、彼の打撃はもう保証済みだ。ならば、1イニングをきっちりと任せること。それが二刀流成功への道だ」

 だが、大谷は周囲で巻き起こった逆風を、目に見える結果でもって見事にはねのけた。先発投手としての傑物ぶりは数字が如実に物語る。130回1/3を投げて9勝2敗。防御率3.18で、156個をマークした奪三振率は10.77と軒並みハイアベレージを残したのである。言わずもがなだが、およそ打者が残す数字ではない。
 
 もちろん大谷に先発投手としての課題が全くないわけではない。とりわけ与四球率(3.04)が平均よりもやや上回ってしまった制球力はメジャーの一線級と比較すれば、遠く及ばない。しかし、だ。大谷は、まだ進化の過程だとは考えられないだろうか。なにせ、MLBで二刀流を完遂したのは、今シーズンが初なのだ。

 その想いはメジャーの酸いも甘いも知るレジェンドも同様だ。偉才の出色のパフォーマンスを「ただただ脱帽だ」と評した元メジャーリーガーのジョン・スモルツは、『MLB Tonight』で、こう熱弁をふるった。

「私はオオタニについてどうかと訊かれるたびに、『もう少し待ってあげてくれ』と言っている。だって、彼はまだメジャーで30先発ぐらいしかしていないじゃないか。やっと本格的なピッチングの組み立て、そしてコースの投げ分けといった技術に関して、取り組み始めたってぐらいなんだよ。ここからが大事になるんだ」

 来季もおそらく大谷は二刀流に取り組みながら先発マウンドに立つ。MLB通算で213勝、154セーブという伝説的記録を残したスモルツが「ここから」という男はいかなる成長を見せるのか。今から楽しみでならない。

構成●THE DIGEST編集部

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