プロ野球

元日本ハム・谷口氏の発言が呼んだ波紋。番記者が記名で「戦力外予想」するアメリカと日本の違い<SLUGGER>

出野哲也

2022.01.06

女性ファンから絶大な人気を誇った現役時代の谷口氏。今後は球団職員として第二のキャリアを歩む。写真:産経新聞社

「今はSNS時代です。でも『戦力外』を簡単に予想しているのだけは許せなかった。『何が楽しいの? 会社をクビになるのと一緒だよ』と。特に僕は3~4年、ずーっと続いていたわけです。そんなの、一番わかっているのだって自分ですよ」

 現役を引退したばかりの谷口雄也氏(元日本ハム)が、先日さるネットメディアの取材に際して語った言葉である。ある程度の年齢になれば、成績不振や故障などによって出場機会が減少した選手は、翌年の構想から外れるのではないか――と危機感を覚えるだろう。神経を尖らせている状態にあって、そのような書き込みを目にすれば、反感を覚えて当然だ。

 選手のツイッターやインスタグラムなどに、直接そうした内容を書き込むのはもってのほか。そうでなくとも、単なる好き嫌いで要不要を論ずるのもNGだ。けれども、プロ野球は毎年必ず戦力外になる選手が出てくるもの。「来季の戦力構想」に言及する際、その点は避けて通れない。
 
 例えば、谷口氏が在籍していた日本ハムに関しては、近年はドラフトの季節になると「捕手と遊撃手の即戦力を指名すべきだ」との意見がファンの間で多数聞かれた。SNSだけでなく、新聞や雑誌など公共の目に触れるメディアでもこうした予想はされている。それはこの2つのポジションが客観的に見て弱点だったからで、はっきり言葉に出してはいなくても「今いる選手には期待できないから代わりを入れろ」と言っているのに等しい。プロ野球チームは勝利を目指す集団であり、そのために必要な力量がなければ、厳しい声が出るのは当たり前だ。

 またこのオフ、中日からFAとなった又吉克樹がソフトバンクへの入団を表明した際には、少なからぬメディアが人的補償から外れる28人のプロテクト枠を予想していた。そこに名前がないのは、必要とされる選手として上から28番目までに入っていないことを意味する。戦力外予想とはニュアンスが多少異なるとはいえ、基本的には同じことだ。

 それに、外国人選手に関しては昔から「クビ確実」といった厳しいコメントも含め去就予想がごく普通に行われていて、誰も異を唱えない。日本語が読めない外国人には何を書いても構わない、ということなのだろうか。谷口氏が具体的にどのような書き込みを見たかは不明だが、個人のSNSにそこまで配慮を求めるのはどうなのだろう。無責任な意見が垂れ流されている場に足を踏み込まないことも、選手側の自衛手段として必要なのではないか。
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選手とメディアの利害は常に一致するものではない