プロ野球

【開幕1か月「MVP」と「逆MVP」|阪神】出遅れても“連敗ストッパー”となったエース青柳が希望の光に。逆MVPは悪夢の開幕9連敗の契機を作った助っ人

チャリコ遠藤

2022.04.29

連敗を繰り返すチームの中で、2戦2勝と好調の青柳。開幕1ヵ月のMVPに認定していいだろう。写真:塚本凛平 ※昨年撮影

 3月25日に開幕したプロ野球は早くも1か月が経過。絶好調の選手、不振に苦しむ選手など早くも明暗が分かれている。全12球団の開幕からの「MVP」、「逆MVP」を挙げてみよう。今回は阪神だ。

【MVP】
青柳晃洋(投手) 


 失意で開幕を迎えた男がどん底のチームを救って見せた。キャリア初の開幕投手に内定しながら、新型コロナウイルスに感染し断念。開幕から約3週間にわたって、一軍を離れることとなり、4月15日の巨人戦でシーズン初登板を迎えた時点で、チームは17戦でわずか1勝に沈んでいた。

「流れを持ってきたかった」と責任感の強い右腕は、その試合で8回1失点の快投を披露して初勝利を手にすると、22日のヤクルト戦では実に3年ぶりの完封勝利。チームの連敗をそれぞれ6と4で食い止める、価値ある2勝で出遅れた分を見事に取り返した。

 隔離期間を終えて二軍に合流した際には、「ポジションをもう一度、奪いに行くつもり」という強い気持ちを胸に急ピッチで調整に励んできた。主力としての強い自覚と、昨季二冠を勝ち取った投手とは思えない危機感。「みんなに『やっぱり青柳だな』と思わせたかった」。その言葉に誰もがうなずきたくなる虎の新エースの逆襲だった。
 
【逆MVP】
カイル・ケラー(投手)


 両リーグ最速で20敗を喫するなど、黒星を重ね続けたシーズン序盤で痛感したのは、昨季まで絶対的守護神として9回に君臨していたスアレスの穴だった。

 新たにクローザーとして期待されたのが、オフに新加入したカイル・ケラー。コロナ禍で来日が遅れ、春季キャンプに参加できず調整遅れの懸念もあったが、オープン戦や二軍の教育リーグで登板を重ねて、矢野燿大監督から"最後の砦"として指名された。

 しかし、シーズン初戦から"勝利の青写真"は大きく崩れてしまう。ヤクルトとの開幕戦で1点リードの9回に2被弾3失点と炎上して敗戦投手になると、4日後の広島戦でも1点を守れずサヨナラ負け。そのまま二軍降格となった。

 実戦不足は否めず、開幕時点でコンディションは100%でないように見えたが、本人の意気込みを買って首脳陣が少々"見切り発車"でバトンを託したために最悪の展開が待っていた。2試合で防御率33.75。再昇格を目指すケラーの逆襲はあるのか。汚名返上のパフォーマンスが待たれる。

文●チャリコ遠藤