プロ野球

目指すべき道は本当に「二刀流」なのか。立浪監督が描く将来像における「投手・根尾」の位置付け<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.05.22

ついに一軍のマウンドに上がった根尾。マツダスタジアムを埋め尽くしたカープファンからもどよめきの声が上がった。(写真)産経新聞社

 5月21日の広島戦で、根尾昂(中日)が初めて一軍のマウンドに上がった。

 1対10と大量リードされた8回裏に登板した根尾は、いきなり坂倉将吾への初球で自己最速タイの150キロをマーク。同じ2018年のドラフトで1位入団した小園海斗とも対戦し、結果は1回1安打無失点。試合後、根尾は「素直に抑えられてうれしいです」とのコメントを残した。

 立浪和義監督は「昨日もいっぱい投手が投げているので、最後一人どうしても足りなかった」と起用の理由について説明し、「またこういう展開で投げることはあるかもしれない」とも語った。

 高校時代から大きな注目を集めていただけあって、根尾の登板は瞬く間に大きなニュースとなった。中には「リアル二刀流」という表現を使って報じたスポーツ新聞もあった。

 ただ、今回の登板を持って根尾を「二刀流」と表現するのは時期尚早だろう。
 確かに、野手と投手を兼任するという意味では間違っていないが、まさにベーブ・ルースや大谷翔平(エンジェルス)がそうであるように、投打両方でチームの勝利に「貢献」できて初めて「二刀流」と言えるのではないか。

 大量リードされた場面で、投手をいたずらに酷使したくないという理由で野手を登板させるケースは、メジャーリーグではそれこそ日常茶飯事だ。逆に、延長戦になって投手が代打や代走で登場することも珍しくない。いずれも言わば「緊急措置」であって、そういった起用法まで「二刀流」と呼ぶなら、メジャーリーグは「二刀流」だらけになってしまう。

 では、根尾は今後「真の二刀流」の道をたどる可能性はあるのだろうか。そうなった場合、最も近いモデルケースとなるのは、メジャーで「中継ぎ投手兼外野手」として活躍したマイケル・ロレンゼンだろう。現在は先発投手として大谷と同じエンジェルスに所属するロレンゼンは、19年に73試合に登板した一方で、外野手としても29試合に出場(うち6試合が先発)。投げては防御率2.92、打っては打率.208、1本塁打、5盗塁という成績を残した。
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野手としても課題が多い中で投手・根尾は時期尚早?