プロ野球

チームが苦しむなかで2軍で送るもどかしい日々。阪神・藤浪晋太郎は“現状”に何を想うのか?「1軍に呼ばれるまで――」

チャリコ遠藤

2022.05.24

鳴尾浜球場で鍛錬を重ねている藤浪。彼はチームが不振に喘ぐなかで戦力になり切れていない現状に何を想うのか。写真:産経新聞社

 もどかしい日々を送っていることは間違いない。勝負……いや、キャリアの行く末をも左右しかねない1年は消化不良と言わざるを得ない発進だ。阪神タイガースの藤浪晋太郎は今、ファームの本拠地・鳴尾浜球場で黙々と汗を流している。
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 なぜここにいるのか――。再調整や2軍降格ではなく、4月中旬に自身2度目の新型コロナウイルスに感染し、1軍のローテーションから無念の離脱。隔離期間を終えて、ファームで実戦登板を重ねてはいるが、その間に高卒3年目の西純矢が台頭し、新助っ人のアーロン・ウィルカーソンが開幕前の予想とは裏腹に思わぬ掘り出し物になるなど、先発陣はきっちり6人揃ってそれぞれ好調をキープ。ローテーションに藤浪の入り込む余地がない状況である。

 現状は、他の選手の不振やアクシデントに備えてスタンバイする"入れ替え要員"の立場と言える。

「チャンスが巡ってこないのはしょうがないので、1軍に呼ばれるまで良い準備をできたらなと思います」
 
 復帰後最長の6回を投げて1失点だった5月18日のウエスタン・リーグの中日ドラゴンズ戦後、本人は気丈にそう話した。ファームの打者を圧倒的な球威の直球とキレ味鋭い変化球で圧倒する様を見ていれば、やはりもどかしい。コールアップの声はいつ届くだろうか、と。

 期せずして訪れた"幕開け"のマウンドで勝負の10年目シーズンは始まった。プロ7年目で初の開幕投手に内定していた青柳晃洋の新型コロナ感染を受け、矢野燿大監督は「晋太郎(藤浪)でいこうかなと思っている」と代役に指名。昨年に続き2年連続で大役を担った。

 3月25日、オープニングゲームとして京セラドーム大阪で行なわれた昨年セ・リーグ覇者ヤクルト・スワローズ戦は立ち上がりに先制点を献上したものの、打線の大量援護にも後押しされて7回6安打3失点にまとめた。守護神のカイル・ケラーが9回に逆転を許して自身初の開幕戦勝利、昨年6月13日以来となる白星は幻となったが、近年とは一味違う姿を春先から見せてきた藤浪に、日を待たずして勝利の女神は微笑むかに思われた。

 しかし、その後も2戦続けて5回を投げきれずに降板。今季4度目の登板となるはずだった4月14日の中日戦はローテーション生き残りをかけたマウンドだったが、コロナ感染が判明し今に至る。
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