千両役者のグランドスラム。
第104回全国高校野球選手権大会、第10日の第4試合。7回裏、近江高の4番エース・山田陽翔が、左翼スタンドに放り込んだ満塁弾は、一見すればそんなインパクトのある一打だった。
この回は、近江が2対1とリードで迎えていた。当然、近江は追加点が欲しい。一方の守る海星高側は、このまま1点差で8、9回を迎えたかったはずだ。
なぜ、この場面で満塁ホームランを打たれてしまったのか。
山田との勝負の前の海星ベンチの慌ただしさを見ると、野球におけるさまざまな要素が、この場面には集約されたように思えて仕方なかった。
実はこの時海星のベンチでは、天理との2回戦で8回途中2失点の好投を見せた向恵理登が「今か今か」と出番に備えていた。エースの宮原明弥には疲れがあったし、そもそも、海星は2人の主戦投手を擁して勝ってきたチームだった。この窮地では、生きたボールを投げられるであろう向が登板してもおかしくなかった。
しかし、海星の加藤監督は交代しなかった。
「心の中では勝負が決まるまでは宮原だと思ってたので、そこはもう行かせようと思いました。(結果が)マルと出ようがバツになろうが宮原はエースなので、あの場面は行かせました」
この決断の理由には、2つのことが想像できた。
一つは、このピンチはエースが背負うべきだという“運命論”。そしてもう一つは、次の攻撃が9番の宮原から始まる巡り合わせから来る“戦術論”だ。
加藤監督にとって想像外だったのは、宮原が打たれたのが満塁弾だったということだろう。さすがに、この結末は予想できなかったのではないか。
「当初は山田くんにピッチングもバッティングもさせないっていうのが一つのキーポイントだったと思います。ところは、そこが真逆の展開になってしまい、1人にやられて、1人に打たれてっていう感じになった。それにうちの守備が崩れて楽にさせてしまった流れがありましたから、この時点でもう試合は終わってたのかなと」
加藤監督はこの敗戦を「守備で負けた」と総括している。それは、試合前の算段が一つのミスによって狂ったからである。
第104回全国高校野球選手権大会、第10日の第4試合。7回裏、近江高の4番エース・山田陽翔が、左翼スタンドに放り込んだ満塁弾は、一見すればそんなインパクトのある一打だった。
この回は、近江が2対1とリードで迎えていた。当然、近江は追加点が欲しい。一方の守る海星高側は、このまま1点差で8、9回を迎えたかったはずだ。
なぜ、この場面で満塁ホームランを打たれてしまったのか。
山田との勝負の前の海星ベンチの慌ただしさを見ると、野球におけるさまざまな要素が、この場面には集約されたように思えて仕方なかった。
実はこの時海星のベンチでは、天理との2回戦で8回途中2失点の好投を見せた向恵理登が「今か今か」と出番に備えていた。エースの宮原明弥には疲れがあったし、そもそも、海星は2人の主戦投手を擁して勝ってきたチームだった。この窮地では、生きたボールを投げられるであろう向が登板してもおかしくなかった。
しかし、海星の加藤監督は交代しなかった。
「心の中では勝負が決まるまでは宮原だと思ってたので、そこはもう行かせようと思いました。(結果が)マルと出ようがバツになろうが宮原はエースなので、あの場面は行かせました」
この決断の理由には、2つのことが想像できた。
一つは、このピンチはエースが背負うべきだという“運命論”。そしてもう一つは、次の攻撃が9番の宮原から始まる巡り合わせから来る“戦術論”だ。
加藤監督にとって想像外だったのは、宮原が打たれたのが満塁弾だったということだろう。さすがに、この結末は予想できなかったのではないか。
「当初は山田くんにピッチングもバッティングもさせないっていうのが一つのキーポイントだったと思います。ところは、そこが真逆の展開になってしまい、1人にやられて、1人に打たれてっていう感じになった。それにうちの守備が崩れて楽にさせてしまった流れがありましたから、この時点でもう試合は終わってたのかなと」
加藤監督はこの敗戦を「守備で負けた」と総括している。それは、試合前の算段が一つのミスによって狂ったからである。
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