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ファン目線の改革を断行も大谷とトラウトの才能を浪費…エンジェルス身売りを表明したオーナーの“功罪”<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.08.24

20年にわたってオーナーとして君臨したモレノ。最近は独断専行の姿勢に批判が集まっていた。(C)Getty Images

20年にわたってオーナーとして君臨したモレノ。最近は独断専行の姿勢に批判が集まっていた。(C)Getty Images

 現地時間8月23日、エンジェルスはオーナーのアート・モレノが球団売却の意向を発表した。

 モレノは球団が発表した声明で「20年間にわたってエンジェルスを所有してきたことは大変な名誉だった」としながら「最終的に今こそ(身売りの)時期だとの結論に達した」と説明している。

 1946年にアリゾナ州で生まれたモレノはベトナム戦争に従軍した後、アリゾナ大でマーケティングを専攻。卒業後は屋外広告ビジネスで大成功を収め、2003年にウォルト・ディズニー社からエンジェルスを1億8000万ドルで買収。MLB史上初のヒスパニック系オーナーとなった。

 当時のモレノは「理想のオーナー」に限りなく近い存在だった。オーナー就任後最初にしたことは、エンジェルス・スタジアムのチケットとビールの値下げ。自ら客席を練り歩いてファンの声に耳を傾け、ファンサービス向上に努めた。
 
 一方で、02年に創設以来初の世界一に輝いたチームの戦力を維持するべく、補強にも惜しみなく資金を投じた。ブラディミール・ゲレーロやバートコ・コロンといった大物選手をFAで獲得し、名将マイク・ソーシア監督の存在もあってチームは04年以降の6年間で5度の地区優勝と黄金時代を作り上げた。ファーム組織からも次々に有能な選手が登場していた当時のエンジェルスは、間違いなくMLBきっての「模範球団」だった。

 観客動員も、03年に球団史上初めて年間300万人を突破すると、その後もコロナ禍前年の19年まで17年連続で大台をクリア。かつては完全にドジャースの影に隠れていたチームの存在感を大きく押し上げた。

 だが、10年代に入ってから徐々に歯車が狂っていく。

 11年オフに球界最強スラッガーのアルバート・プーホルス、12年オフには同じく元MVPのジョシュ・ハミルトンと「超」がつく大物選手をFAで獲得したが、どちらも目を覆わんばかりの失敗。12年にメジャーデビューを果たしたマイク・トラウトの超人的な活躍もあって14年には5年ぶりの地区優勝を果たしたが、翌年からは7年連続で負け越しが続いている。
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