当代で唯一無二の二刀流戦士が異彩を放った。

　現地時間８月27日に敵地で行なわれたトロント・ブルージェイズ戦に、大谷翔平（ロサンゼルス・エンジェルス）は、「３番・DH兼投手」で先発。７回（109球）を投げて、被安打２、９奪三振、無失点の好投。チームも２対０で接戦をモノにし、８月９日（現地時間）のオークランド・アスレティックス戦以来となる今季11勝目を挙げた。

　相手バッターが手を付けられないほどの快投だった。初回こそ28球を要したが、その後はペースをほとんど乱さずに２回18球→３回16球→４回10球→５回12球→６回10球→７回15球とテンポの良い省エネピッチングを実行。本人が「まあ、粘れたのかな」と振り返ったように連戦が続き、疲労も蓄積したなかで、エースらしいピッチングを披露した。

　これで投手としてのfWAR（米データサイト『FanGraphs』のWAR）を4.0に伸ばした大谷。その活躍ぶりを見た周囲からは、ふたたびシーズンMVPの受賞を期待する声が噴出。現在、最有力候補に挙げられているアーロン・ジャッジ（ニューヨーク・ヤンキース）との比較論が巻き起こっている。
  　SNSなどで論争が白熱するなかで、公の場で興味深い意見を提示したのは、かつてサンディエゴ・パドレスなどで活躍したヨンダー・アロンソ氏だ。現地時間８月27日に放送されたMLBの公式ネットワークの番組「MLB Tonight」に出演した元名手は、「いま僕らが目撃していることは歴史的なんだ。ジャッジの活躍も十分ではない」と主張した。

「たしかにジャッジのやっていることには、ものすごく感銘は受けるよ。だけど、ショウヘイのやっていることは本当に誰も見たことがないことなんだと言わせてくれ」

　この意見にすかさず、番組MCのグレッグ・アムシンガー氏が「野球のあらゆる記録の中で、最も神格化されてきたものはシーズン61本塁打（ロジャー・マリスのア・リーグ年間記録）だと思う。でも、何人かの選手（ボンズやマグワイアたち）のせいでステロイドに汚され、僕らは麻痺しているんじゃないか」と問う。だが、アロンソ氏の意見は変わらなかった。メジャー歴９年の彼はきっぱりとこう切り返している。

「彼の数字を見てほしい。シーズン200奪三振と2.50以下の防御率、そして30本塁打もあり得るんだ。そんな数字を残す彼のプレーぶりを見ていたら、『でもさ、あの男（ジャッジ）は61本塁打を打つ可能性があるぞ』なんて言えないね。ショウヘイがやっているのは、毎日歴史を作るってことなんだ！」

　無論、アムシンガー氏のようにジャッジを推す声が根強いのも確か。それだけに最後の最後まで、両雄に対する話題は続きそうである。その議論の中心に当たり前のように日本人選手がいるのは、実に興味深いところだ。

構成●THE DIGEST編集部

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