いわゆる“お得意様”を相手に、偉才は容赦なく牙をむいた。

　現地時間８月29日に行なわれたニューヨーク・ヤンキース戦に「３番・DH」で先発した大谷翔平（ロサンゼルス・エンジェルス）は、２試合連続となる今季29号２ラン本塁打を含む４打数２安打２打点と活躍。強敵を相手に、チーム勝利に貢献した。

　他でもない本人が「やっぱり楽しい」と語った試合は、球場に４万4537人ものファンが詰めかける大入りの状態で行なわれた。そのなかで異能の二刀流戦士が違いを見せつけたのは、２対２で迎えた５回裏、２死一塁の局面だった。

　対峙したのはフランキー・モンタス。今夏のトレードでオークランド・アスレティックスからやってきた右腕は、通算の対戦で打率.429、３本塁打、９打点と相性が抜群の相手でもあった。

　大谷は試合後に「たまたま最後にいい形になった」と淡々と語ったが、そうとは思えないほど完璧な一打となる。カウント１-２、いずれもスプリットを投じてきたモンタスが三振を狙いに来た４球目を、背番号17は大成を崩されながらも右手一本で捉える。見事にすくい上げられた一発は右中間スタンドの後方へと突き刺さったのである。
  　相性の良さを活かし、決勝弾を放った大谷には「MVP」コールが送られ、球場全体が大いに湧きかえった。一方で、まんまと“カモ”にされてしまった29歳の右腕からすれば悔しい一発となったのは言うまでもない。

　敗戦後にヤンキースの地元放送局『YES Network』の取材に応じたモンタスは、４球連続で“決め球”であるスプリットを選択した理由について「あれしかない。あれ意外に（選択は）なかったね」とうなだれながらコメント。そして、眼前に立ちはだかった天才スラッガーを、こう評した。

「あの時、スプリットにはいい感触があって、だから投げようと思った。だけど、打たれたんだ。本当にオオタニはいい打者さ。僕としてはうまく投げたと思った球がいくつかあって、あの場面でオオタニに投げたスプリットもいい球だった」

　相手が「これしかない」と投じたボールをいとも容易く攻略してしまう大谷。ほぼ右手一本でスタンドまで運ぶパワーもさることながら、その打撃センスには脱帽するしかない。

構成●THE DIGEST編集部

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