プロ野球

追い求めるのは“究極の一球”。最強投手陣をけん引する梅野隆太郎はなぜ阪神に残ったのか?「絶対にもっと強くなる」

チャリコ遠藤

2022.09.06

プロ9年目。31歳となった梅野。若手中心の投手陣を牽引する虎の正妻が抱く想いとは?写真:鈴木颯太朗

 2022年の阪神タイガースは開幕9連敗を喫するなど、悪夢の幕開けとなった。6、7月は大きく勝ち越して一時はペナントレースを独走するヤクルト・スワローズとの差を縮めたものの、8月に再失速の8連敗。逆転優勝への"挑戦権"は、横浜DeNAベイスターズに奪われた格好となった。

 開幕前に今季限りでの退任を表明した矢野燿大監督のラストシーズンは現時点で3位と不本意な形で最終盤を迎えている。そんなチームにあって、まばゆい光を放ち続けているのがリーグ屈指の陣容を誇る投手陣だ。

 チーム防御率2.56はセ・リーグ唯一の2点台で断トツトップ。先発(2.68)と救援(2.30)と分けても、どちらも1位(数字は3日時点)と、疲れの溜まり始める夏場も数字は悪化していない。青柳晃洋、伊藤将司、西勇輝など開幕から安定感のある先発陣に、ポジションの変動こそありながら個の結集で「鉄壁」と化しているブルペン陣。他球団も羨むクオリティーを持つ投手陣は、間違いなく猛虎の"牙"だ。

 そんな投手陣を引っ張るのが、扇の要、梅野隆太郎である。
 
 プロ9年目を迎えた31歳の正妻は、昨年5月に国内FA権を初取得も、行使せずに同年12月に残留を表明。その熟考の末の決断には仲間への思いや、頂点に対する渇望があった。

「若いチームで、絶対にこれからもっと強くなっていくし、その中心で引っ張っていきたい。このメンバーと野球をしたい、みんなと優勝したいという思いで残留を決めた」

 マスク越しに甲子園で広がる明るい未来を見ていた梅野。今季は主に坂本誠志郎との併用もありながら捕手での先発出場はチーム最多。先の言葉通り、若手をリードと背中でけん引している。

 もっとも、新たなシーズンを迎えるにあたってチーム、そして梅野には解決しなければいけない"難題"が横たわっていた。昨シーズンに絶対的守護神として君臨したロベルト・スアレスの退団によって生じた穴の補填だ。

 かねてからの夢であったメジャー移籍をサンディエゴ・パドレスとの契約で叶えたスアレス。剛腕クローザーの離脱によってぽっかりと空いた穴の大きさを、誰よりもそのボールを受けてきた梅野は理解していた。だからこそ、開幕前に「スアレスがいなくても、そこをカバーできるような投手陣にできるように。それぞれが最高の成績を残せるようにキャッチャーとしてサポートしていきたい」と決意をにじませた。
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