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三冠王もありえるジャッジか、唯一無二の二刀流・大谷翔平か。元CY賞の剛腕が悩める胸中告白「定義が曖昧になっている」

THE DIGEST編集部

2022.09.19

至高のMVPレースの主役となっているジャッジ(左)と大谷(右)。この両者の争いは多くの識者たちを悩ませている。(C)Getty Images

 話題沸騰中のMVP争いに大きな影響を与えるような出色のプレーぶりだった。現地時間9月17日に本拠地で行なわれたシアトル・マリナーズ戦で13勝目を挙げた大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)のそれである。

 今季25度目の先発マウンドに立った二刀流戦士は、図抜けた存在感を放った。本人が「自信にしていい」と振り返ったように、序盤からマリナーズ打線に手も足も出させずに快調に投げ進めた。

 敵将のスコット・サーバイスをして「リーグ屈指の投手だ」と唸らせた快投で、相手打線を見事に牛耳ったヒーローは、打っても初回に自らを援護するタイムリーツーベースを放つなど奮闘。結局、7回(107球)を投げて無失点、8奪三振の好投で、白星を掴んだ。

 無論、この活躍によって、巷で話題となっているアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)との"MVP論争"もふたたび白熱。主にSNSではあらゆる議論が飛び交っている。

 もっとも、この論争が史上類を見ないほどに白熱している理由のひとつは、ジャッジのパフォーマンスの凄まじさという点にある。アメリカン・リーグのシーズン本塁打記録(61本)に迫る57本塁打もさることながら、ジャッジが刻んでいるのは、打率.312、打点123、出塁率.415、OPS1.102という図抜けたスタッツの数々。"投げられない"という事実を差し引いてもMVPに推したくなるほどのハイアベレージだ。
 
 MLB史上18人目の三冠王になる可能性を残しているジャッジか、唯一無二の二刀流戦士、大谷翔平か――。このテーマに多くの識者や記者、ひいてはファンの野球観が問われていると言っていい。そうした状況下で、「どんな雰囲気か、いつ問うかで、答えは変わってしまうような気がする」と、複雑な胸中を打ち明けたのは、2007年のサイ・ヤング賞右腕であるジェイク・ピービー氏だ。

 現地時間9月15日に放送されたMLB公式ネットワーク番組『MLB Tonight』において、百戦錬磨の名投手は、言葉を絞り出すように持論を語った。

「私にとって三冠王は、同時に満票MVPを意味するものさ。だけど、MVPになった昨年を凌駕する活躍を見せているショウヘイを見ると悩ましいね。私はショウヘイのような選手は見たことがない。ハッキリ言って、史上最高の野球選手だと思う。ピッチャーとして良いときはリーグ最高の実力者だ。同時に35本(※実際は34本)もホームランを打つなんて信じられない。

 僕らがプレーしていた頃は、MVPの定義はまさにリーグの中でベストな選手を表していた。今はそれが曖昧になっていると思う。ショウヘイこそ歴代最高の選手だと思うが、MVPとして挙げるときに、誰が最も価値があるかというと、ジャッジも惜しい。ヤンキースから彼を取り去れば、プレーオフにすらいけないかもしれないからね。まさに論理のぶつかり合いさ」

 MLBの酸いも甘いも熟知する名投手でさえも悩ませるジャッジと大谷の争い。こうして世間を賑わせる娯楽性は両者の"価値"を物語っているとも言えるだけに、なんとも興味深い。

構成●THE DIGEST編集部

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