1ゲーム差で首位のソフトバンクを追っていた2位のオリックスが、10月2日に楽天生命パークで行われた楽天との今季最終戦に勝利。それから約2分後、ZOZOマリンスタジアムで行われていた試合でソフトバンクがロッテに敗れたため、オリックスとソフトバンクが同率首位で並んだ。これで規定により、直接対決で勝ち越しているオリックスが2年連続のリーグ優勝を果たした。同率でリーグ優勝が決まったのはプロ野球史上初のことだ。
オリックスの中嶋聡監督は「本当に感無量というか、本当にこんなことがあるのかと信じられない気持ちです」と、我がことながら奇跡の逆転優勝にかなり驚いた様子だった。全体的には「うれしい1年」と今季を総括しながらも、「コロナとの戦いで、活躍したメンバーが抜けるのは苦しかったが、補うメンバーが出てきてくれた。(ロッテ佐々木朗希にやられた4月10日の)完全試合のあたりは非常に苦しかった。これでもか、というくらい(選手が)いなくなる時もあって、苦しかった」と、本音も漏れた。中嶋監督自身もコロナの影響でチームを離れた時期があっただけに、「何があってもいいように」という考えはチーム全員が共有していた。
9月29日。この日試合がなかったオリックスは午前中から数時間、京セラドーム大阪で全体練習をした。この練習中、中嶋監督は京セラを一旦離れている。向かった先はファームの今季最終戦が行われる舞洲だった。この時、中嶋監督は普段交流が少ない選手たちに声をかけていたという。これには、ナインから「とてもありがたいこと。自分たちも気にかけてくれてるんだなと。クライマックスシリーズに向けてモチベーションが上がった」という声が挙がった。中嶋監督は目配り、気配り、心配りを欠かさないことで、選手のモチベーションを下げさせない。実際、この視察後にファームで再調整していた杉本裕太郎が一軍に合流している。
最大11.5ゲーム差からの大逆転劇には、日替わりでさまざまな選手がヒーローとして出てきた。中嶋監督は、「選手が自分でつかんだポジション。それを離さないというか、チームにも選手にもプラスになった」と話したが、投手陣では、宇田川優希、山崎颯一郎、阿部翔太、ワゲスパックが終盤に強固な中継ぎ陣として活躍。野手では中川圭太、頓宮裕真がレギュラーの座をつかんでいる。それぞれが中嶋監督の期待に応えた結果、「それを離さなかった」のだ。
9月17~19日の対ソフトバンク最終3連戦では、「リミッター外すよ」と宮城大弥と田嶋大樹を初の中5日で登板させた。だが、中継ぎ陣は山崎颯一郎が「元気そうだったから」と3連投させた以外は無理をさせなかったことが、その後の追い上げにもつながった。
逆にソフトバンクは、松本裕樹、藤井皓哉、モイネロ、の勝利の方程式3人を、前日まで3連投させてしまったことにより、最終戦では使うことができずロッテに逆転を許している。本人は謙虚だったが、中嶋監督の手腕が光った結果、決してベストとは言えないメンバーで連覇を勝ち取ったのである。
昨年の日本シリーズに惜敗し、「自分たちはまだ日本で2番目です」という言葉から始まった2022年シーズン。連覇を決めた後、「日本シリーズ、絶対に出たいと思います」という指揮官の言葉には力強さがみなぎっていた。昨年のリベンジに向けて戦いはまだ続く。
取材・文⚫︎どら増田
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。
オリックスの中嶋聡監督は「本当に感無量というか、本当にこんなことがあるのかと信じられない気持ちです」と、我がことながら奇跡の逆転優勝にかなり驚いた様子だった。全体的には「うれしい1年」と今季を総括しながらも、「コロナとの戦いで、活躍したメンバーが抜けるのは苦しかったが、補うメンバーが出てきてくれた。(ロッテ佐々木朗希にやられた4月10日の)完全試合のあたりは非常に苦しかった。これでもか、というくらい(選手が)いなくなる時もあって、苦しかった」と、本音も漏れた。中嶋監督自身もコロナの影響でチームを離れた時期があっただけに、「何があってもいいように」という考えはチーム全員が共有していた。
9月29日。この日試合がなかったオリックスは午前中から数時間、京セラドーム大阪で全体練習をした。この練習中、中嶋監督は京セラを一旦離れている。向かった先はファームの今季最終戦が行われる舞洲だった。この時、中嶋監督は普段交流が少ない選手たちに声をかけていたという。これには、ナインから「とてもありがたいこと。自分たちも気にかけてくれてるんだなと。クライマックスシリーズに向けてモチベーションが上がった」という声が挙がった。中嶋監督は目配り、気配り、心配りを欠かさないことで、選手のモチベーションを下げさせない。実際、この視察後にファームで再調整していた杉本裕太郎が一軍に合流している。
最大11.5ゲーム差からの大逆転劇には、日替わりでさまざまな選手がヒーローとして出てきた。中嶋監督は、「選手が自分でつかんだポジション。それを離さないというか、チームにも選手にもプラスになった」と話したが、投手陣では、宇田川優希、山崎颯一郎、阿部翔太、ワゲスパックが終盤に強固な中継ぎ陣として活躍。野手では中川圭太、頓宮裕真がレギュラーの座をつかんでいる。それぞれが中嶋監督の期待に応えた結果、「それを離さなかった」のだ。
9月17~19日の対ソフトバンク最終3連戦では、「リミッター外すよ」と宮城大弥と田嶋大樹を初の中5日で登板させた。だが、中継ぎ陣は山崎颯一郎が「元気そうだったから」と3連投させた以外は無理をさせなかったことが、その後の追い上げにもつながった。
逆にソフトバンクは、松本裕樹、藤井皓哉、モイネロ、の勝利の方程式3人を、前日まで3連投させてしまったことにより、最終戦では使うことができずロッテに逆転を許している。本人は謙虚だったが、中嶋監督の手腕が光った結果、決してベストとは言えないメンバーで連覇を勝ち取ったのである。
昨年の日本シリーズに惜敗し、「自分たちはまだ日本で2番目です」という言葉から始まった2022年シーズン。連覇を決めた後、「日本シリーズ、絶対に出たいと思います」という指揮官の言葉には力強さがみなぎっていた。昨年のリベンジに向けて戦いはまだ続く。
取材・文⚫︎どら増田
【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。