日本の投手たちは長年、吉田正尚の攻略に頭を悩ませてきた。そして今、MLBの各球団は吉田の特異なスキルが今後のチーム作りにどうフィットするのか、同じように頭を悩ませている。

　ポスティング・システムを使ってMLB球団との交渉に臨むオリックスのチームリーダーには、数多くの長所がある。吉田は打席での辛抱強さに優れた左打者で、多くの四球を選び、打率も高い。ストライクゾーンを広くカバーし、相手の失投を外野上段まで飛ばすだけでなく、フィールド全体に打ち分けることもできる。

　MLBスカウトにとっての難問は、吉田がこれまで目にしたことのないメジャーの投手たちの球速や変化にどう対応できるか、そして守備でどれだけ貢献できるかだ。

　日本からMLBに渡った打者は例外なく極端な適応に迫られる。それはフィールド上のプレースタイルやレベルの差に限った話ではない。もっとも、スカウトたちを最も悩ませる問題は、その選手のスキルがアメリカで通用するかどうかだ。なぜなら、それこそスカウトたちのボスが最も知りたいことだからだ。

　吉田のMLBでの成功可能性を問われたスカウトたちは一様に、おそらく打撃は一定の条件下で成功するだろうと答えた。だが、守備力が低いため、攻撃面の適応に時間がかかった場合に、各球団がどれだけ我慢できるかという問題が浮上する。
  　スカウトたちの声は以下の通りだ。

▼パワー
「確かにパワーはある。だが、それは『起用するのにかろうじて十分な数のホームランを打つ』程度のパワーだ。彼の攻撃力が潜在的に価値を持つとしたら、それは彼がメジャーの他のパワーヒッターとは違うタイプという点だろう」

「純然たるパワーはあるが、アメリカで目の当たりにする速球に対応できるだろうか？　ホームランをたくさん打つ姿はあまり想像できないね」

「日本でも20本塁打程度だった（編集部注：ここ２年は21本）から、それ以上打つことはないだろう。レギュラーで試合に出られたとしても、20本打つのすら難しいと思う」

▼X-ファクター（成功の決め手）
　近年、MLBのオフェンスはますますパワー重視になっている。それに対して投手たちはこれまで以上に空振りを誘発する投球を徹底している。結果、三振の数がかつてないレベルにまで増えた。スカウトたちによれば、ここに吉田の価値がある。

「彼の打撃には、今のMLBではかなり貴重な特徴がある。とにかく三振を取ることだけを狙う投手が吉田と対戦した時は、適応能力の高さに驚くはずだ。日本では、不調の時でさえボールをよく見て相手投手を疲弊させていたからね」