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バーランダーの飽くなき向上心とシャーザーの燃えたぎる闘争心――メッツ入団の千賀滉大が2人の大投手から学ぶべきこと<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.12.11

5年7500万ドルでメッツ入りを決めた千賀(中央)。バーランダー(左)、シャーザー(右)と強力ローテーションを形成する。(C)Getty Images

 メッツ入りを決めた千賀滉大の選択は賢明な決断だった――早くもそう断言してしまいたくなる。

 今季101勝も挙げた強豪で、ワールドチャンピオンも狙えるチームだから、というのも一因だが、それより何より、計445勝を挙げて殿堂入りがすでに確実な2人の名投手を間近に見られるのが大きい。

「2人の名投手」とはもちろん、ジャスティン・バーランダーとマックス・シャーザーのことだ。2人のこれまでのタイトル&アウォード獲得歴を改めて振り返ってみよう。

▼バーランダー
MVP:1回
サイ・ヤング賞:3回
最多勝:3回
最優秀防御率:1回
最多奪三振:5回
ノーヒッター:3回

▼シャーザー
サイ・ヤング賞:3回
最多勝:4回
最多奪三振:3回
ノーヒッター:2回

 2人でサイ・ヤング賞を計6回、最多勝7回、最多奪三振8回獲得し、ノーヒッターも計5回達成。2人の23年の年俸はそれぞれ4333.3万ドル(約59億円)でMLB史上最高額。過去の実績も、現時点の実力も文字通り「一流の中の一流」の生ける伝説2人が同じチームで投げること自体、滅多にあるものではない。
 
 現在39歳のバーランダーは今季、MLB史上でも有数のカムバック劇を見せた。過去2年はトミー・ジョン手術のため過去2年ほとんど投げていなかったにもかかわらず、勝利(18)と防御率(1.75)でリーグベストを記録。前年全休した投手では史上初、さらに史上4番目の高齢で3度目のサイt・ヤング賞に輝いた。そしてオフにFAとなり、千賀より一足早くメッツと契約した。

 05年にメジャーデビューを果たした当時から「将来は殿堂入りしたい」と語っていたというバーランダー。それがただの大言壮語に終わらなかったのは、常にさらなる高みを目指す向上心があったからだ。

 17年にはデビュー当時からのウイニングショットだったスライダーの改良に着手。さまざまな握りや投げる角度を試行錯誤した結果、手に入れた新たなスライダーで第2の全盛期を築き上げた。

 20年、37歳でトミー・ジョン手術。年齢を考えれば、復帰できたとしても手術前のレベルに戻るのは難しい。誰がもそう思っていた中、満票でサイ・ヤング賞を獲得してみせた。

 バーランダーは今年のポストシーズン中にこう言い放っていた。

「過去にどんなに素晴らしい投球をしても、未来とはまったく関係ない。毎試合毎試合が自分の力を改めて証明するチャンスなんだ」
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不屈の闘争心で世界一をもたらしたシャーザー