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トラウト以上の打球と抜群の選球眼。侍J入り内定のラーズ・ヌートバーはWBC制覇の「秘密兵器」となるか<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2022.12.29

カーディナルスの25歳の期待の若手、ヌートバーが侍ジャパン入りか。リードオフマン、そしてムードメーカーとしても期待される。(C)Getty Images

 2023年3月に開幕する第5回WBC日本代表には、4人のメジャーリーガーが内定している。大谷翔平(エンジェルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、鈴木誠也(カブス)。そして、カーディナルスの外野手ラーズ・ヌートバーだ。日本人の母を持つため、侍ジャパンの出場資格を得た彼は一体どんな選手なのかを紹介しよう。

 ヌートバーは1997年9月8日、カリフォルニア州のエル・セグンド(1980年に打率.390で首位打者を獲得した殿堂入り外野手、ジョージ・ブレットの出身地として知られる)で、前述の通り日本人の母とオランダ人の父との間に生まれた。

 両親の出会いはカリフォルニア・ポリテクニック州立大だった。交換留学生だった母クミと、日本語を専攻していた父チャーリーが意気投合。その後、チャーリーが日本に留学する際、土壇場でホストファミリーに断られてしまい、クミを頼ったことで仲が深まったのだという。ちなみに、ヌートバーには「タツジ」というミドルネームがついている。

 高校時代は、野球とアメリカン・フットボールの二刀流で活躍。アメフトではクォーターバックとして州代表に2度も選出され、野球では強肩好打の外野手として才能を発揮した。南カリフォルニア大時代には、後にカーディナルスでチームメイトになるアルバート・プーホルスから打撃のレクチャーを受けたことがあるという。「雨だったのに、彼は外に座って僕に20分間も打撃について話してくれたんだ」と、ヌートバーはこの時のことをしみじみ語っている。

 18年ドラフト8巡目でカーディナルスに入団し、昨年6月にメジャーデビュー。今季は途中からライトのレギュラーに定着し、108試合で打率.228/14本塁打/OPS.788の成績を残した。
 
 旧来指標で見るとやや物足りない印象も受けるが、ヌートバーは球界屈指の好打者に変貌する可能性を秘めている。まず、選球眼が素晴らしい。今季の四球率は14.7%で、これはMLB6位(300打席以上)。とにかくボール球に手を出さないのが特徴で、シーズン終盤にはリードオフマンも任されていた。

 パワーも進境著しい。マイナー時代は一度も2ケタ本塁打を打ったことがなかったのに、今季は290打数で14発。年間フル出場していたら、30本近く打っていた計算だ。平均打球初速は91.7マイル(約147.5キロ)で、これは40本塁打を放ったマイク・トラウト(エンジェルス)も上回る。

 角度のついた打球を多く打てるようになってきたので、今後はさらなる本塁打量産が期待できる。左打者ながら左投手も苦にしないが、欠点は変化球を打てないことで、特にスライダーやカーブなどの曲がる系の球種に弱い。

 外野守備では特に強肩が売り物で、5月には96.5マイル(約155.2キロ)のストライク送球を披露して、ホームで走者を刺したこともある。侍ジャパンのライトには鈴木誠也(カブス)がいるが、こと肩に関しては鈴木に勝るとも劣らない。

 攻守にダイナミックなプレーと陽気なキャラクター、感情を前面に出すスタイルも相まって、ファンにも大人気。本拠地セントルイスではヌートバーが打席に入ると、必ず「ヌーーーーーーート!」と大声援が送られている。本人も将来、自分の名前に引っ掛けたエナジーバーを売り出す野望を持っており、「NOOT」や「NOOOOOOT」など複数のフレーズを商標登録しているほどだ。

 今年6月、セントルイスの地元テレビ局とのインタビューで「日本人であることは僕の一部で、とても誇りにしている」と語っていたヌートバー。日本国籍ではない選手としては初めて侍ジャパン入りする25歳の好漢は、3大会ぶりの優勝をもたらす「秘密兵器」となるだろうか。

構成●SLUGGER編集部

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