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プロ野球

【勝利貢献指標WARで振り返る2013~21ドラフト】「高卒は当たり外れが大きい」は間違い!大卒社会人は野手に成功例が目立つ<SLUGGER>

出野哲也

2023.01.04

13~21年に指名された1位指名選手108人のうち、村上(左)ら高卒選手は42人。一方、吉田(右)ら大卒選手は49人。高卒社会人は9人、大卒社会人は8人となっている。写真:THE DIGEST写真部

13~21年に指名された1位指名選手108人のうち、村上(左)ら高卒選手は42人。一方、吉田(右)ら大卒選手は49人。高卒社会人は9人、大卒社会人は8人となっている。写真:THE DIGEST写真部

 2013~21年のドラフトを、勝利貢献度を測る総合指標WARで検証するこの企画。第4回は、選手の出身を高校生・大学生・高卒社会人・大卒社会人・その他(独立リーグ他)の5つのカテゴリーに分け、それぞれの「成功度」を検証してみよう。

※データ提供:DELTA

■高校生:通算WAR330.9
▼ベスト5
1位 森友哉(大阪桐蔭高→13年西武1位/現オリックス) 29.7
2位 山本由伸(都城高→16年オリックス4位) 29.0
3位 村上宗隆(九州学院高→17年ヤクルト1位) 23.1
4位 松井裕樹(桐光学園高→13年楽天1位) 19.1
5位 田口麗斗(広島新庄高→13年巨人3位/現ヤクルト) 17.6

■大学生:通算WAR630.7
▼ベスト5
1位 吉田正尚(青山学院大→15年オリックス1位/現レッドソックス) 27.3
2位 大瀬良大地(九州共立大→13年広島1位) 26.4
3位 今永昇太(駒沢大→15年DeNA1位) 23.6
4位 中村奨吾(早稲田大→14年ロッテ1位) 22.8
5位 茂木栄五郎(早稲田大→15年楽天3位) 22.7

■高卒社会人:通算WAR96.3
▼WARベスト5
1位 山岡泰輔(東京ガス→オリックス16年1位) 18.7
2位 加藤貴之(かずさマジック→15年日本ハム2位) 18.1
3位 森唯斗(三菱自動車倉敷オーシャンズ→13年ソフトバンク2位) 11.1
4位 西川龍馬(王子→15年広島5位) 10.2
5位 田嶋大樹(JR東日本→17年オリックス1位) 9.4

■大卒社会人:通算WAR262.2
▼WARベスト5
1位 源田壮亮(トヨタ自動車→16年西武3位) 29.8
2位 石川歩(東京ガス→13年ロッテ1位) 24.2
3位 田中広輔(JR東日本→13年広島3位) 21.4
4位 近本光司(大阪ガス→18年阪神1位) 18.9
5位 大貫晋一(新日鉄住金鹿島→18年DeNA3位) 10.5

■その他:通算WAR14.3
▼ベスト5
1位 又吉克樹(四国IL香川→13年中日2位/現ソフトバンク) 8.7
2位 和田康士朗(BC富山→17年ロッテ育成1位) 2.0
3位 湯浅京己(BC富山→18年阪神6位) 2.0
4位 増田大輝(四国IL徳島→15年巨人育成1位) 1.7
5位 西口直人(甲賀健康医療専門学校→16年楽天10位) 1.7

 将来性を重視して高校生を指名するか、目先の勝利のために即戦力の大学生や社会人を獲るのか。チーム事情次第でドラフトにおける選択はそれぞれ異なるだろうが、過去9年間の通算WARは、圧倒的に大卒選手が多い。通算10以上を記録している選手は高卒9人に対して大卒は23人。高卒社会人5人、大卒社会人5人となっている。

 けれども、入団している選手の総数が違うのだから、単純にこの数字だけで比較しても意味はない。総指名人数のうち、一軍に出場した選手の数とパーセンテージを見てみると以下のようになる。

・高校生 54.6%(414人/226人)
・大学生 78.9%(332人/262人)
・高卒社会人 88.9%(54人/48人)
・大卒社会人 91.0%(122人/111人)
・その他 46.7%(75人/35人)
 
 大卒社会人選手は最も「即戦力度」が高いだけあって、90%前後の選手が一軍出場を経験している。高卒選手が50%余りに過ぎないのは、まだプロ入りして間もない選手たちが多く含まれていることも主な要因だ。選手1人あたりのWARを弾き出すと、大卒社会人が2.46で、大卒の2.37をわずかながら逆転する。高卒社会人は1.78、高卒は1.46、その他が0.41である。

 では、この数字を根拠として高卒より大卒や社会人出身選手を取った方がいいのだろうか? そうとは限らない。すでに述べたように、高卒は大学・社会人出身者より、一軍で実績を残せるようになるまで時間がかかるのは当然で、それがこの数字にも反映されているからだ。

 たとえば19年の指名選手で、現時点で通算WARが最も多いのは、ルーキーイヤーから3年続けて一軍で活躍している森下暢仁(明治大→広島1位/11.7)だ。だが、1年目は登板のなかった佐々木朗希(大船渡高→ロッテ1位)はここ2年で8.4を稼ぎ、年平均では森下の上をいく。同じく1年目は3試合のみの登板だった宮城大弥(興南高→オリックス1位)も8.3、さらには岡林勇希(菰野高→中日、6.9)らも猛追しており、5年後には順位が逆転していてもおかしくない。

 実際、13~21年でMVPを受賞した4選手のうち、山川穂高(富士大→13年西武2位)を除く3人――森、山本、村上はいずれも高卒だ。ドラフトマニアの間では、スケールの大きな選手に育つのは高卒の方が多いというのが定説になっているが、それを実証するような結果である。
 
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