プロ野球

「もう野球はやりたくなかった」“ガム騒動”による猛批判で大不振に陥った韓国の天才打者。WBCは汚名返上の好機に

THE DIGEST編集部

2023.01.15

東京五輪での“ガム騒動”で心身ともに追い詰められたというカン・ベクホ。当時、彼のもとには批判の声が相次いだ。(C)Getty Images

 今から約1年半前の夏。球界では、東京五輪に出場した韓国代表カン・ベクホの行動が波紋を呼んだ。
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 物議を醸したのは、13年越しの五輪連覇を逃していた韓国が、「何としても銅メダルを」と意気込んで迎えたドミニカ共和国と3位決定戦での何気ないワンシーンだった。チームが一気に4点差を付けられて苦しくなった8回表、試合を生中継した公共放送『KBS』が無気力にベンチに座り、噛んでいたガムを口元からダランとぶら下げたカン・ベクホの姿を映し出したのだ。

 結局、試合は韓国が6対10の逆転負け。屈辱の4位に終わった代表への不満もあいまって、4打数2安打1打点と気を吐いていた「天才打者」(カン・ベクホの愛称)には批判の嵐が吹き荒れた。同放送局で解説を務めた元メジャーリーガー、パク・チャンホ氏は「あり得ない!」とバッサリ。さらに「私はずっとカン・ベクホの様子を観ているが、あれは看過できない態度だ」と公共の場で怒りを滲ませた。

 その後、所属するKTウィズに戻ったカン・ベクホは記者会見で「とにかく、なにも考えていなかった。(大逆転されて)ひどく落ち込んでいて、心を痛めて、酷く後悔していたことしか覚えていません」と謝罪。さらにほとぼりが冷め始めた22年2月には、放送局『Channel A』で放送されたバラエティー番組で「メンタル的に崩れて、ひとりになると考えこみすぎて、吐いたこともあった。正直に言って、もう野球はやりたくなかった」と心境を打ち明けていた。
 
 いわゆる"ガム騒動"は彼に暗い影を落とした。帰国後から「何をやってもうまくいかなかった」というカン・ベクホは極度のスランプに陥ったのである。

 とりわけ22年シーズンは最悪だった。怪我による離脱の影響もあったが、3シーズン連続で.330以上を記録していた打率.245に低迷。さらに6本塁打、29打点、OPS.686といずれも自己ワーストの成績を記録し、韓国球界屈指のパワーは鳴りを潜めた。

 東京での何気ない行動によって苦しんできた。だが、そんな彼にも"名誉挽回"のチャンスが訪れている。今年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の韓国代表に選出されたのだ。日刊紙『朝鮮日報』によれば、「スランプはあくまで一時的なものであり、それよりも天性パワーと卓越した技術力が国際舞台で必要になる」と見込まれての抜擢になったという。

 汚名返上に燃える本人が並々ならぬ想いでWBCに挑むのは想像に難くない。それだけに1次ラウンドで激突する日本代表も小さくない警戒をする必要性がありそうだ。

構成●THE DIGEST編集部

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