昨シーズン終盤でのこと。ファームでプレーしている選手たちに話を聞く機会があったのだが、その時に「今、ファームで一番球が速いのは前(佑囲斗)君ですかね」という話題が上がった。本人に話を聞いてみると「突然、速くなったんですよ」と自身も驚いている様子だった。
津田学園高時代は最速152キロを計時し、甲子園に出場。U‐18日本代表にも選ばれた逸材に、球団はかつて山本由伸がつけていた背番号43を与えた。だが、プロ入り後はフォーム改造などに悩み、球速も低下してしまっていた。
昨シーズン終了後、フェニックス・リーグ参加を経て高知での秋季キャンプに参加した前は、鞭のようなミット音を響かせていた宇田川優希の横で投球。さすがに宇田川には劣るものの、春に見た時とは明らかに違う投球を見せていた。
「あとは離すリリースの瞬間だけだと思う。もっと持てるなと思ったところがあったので。(握りは)ほぼ一緒っすね。ほぼ真っすぐに寄せた握りで、フォークボール投げたりしてるので、真っすぐよりちょっと強く振るって感じの意識でやっています」と説明する。落ちる球は「多分、僕はフォークだと思っているんですが、落ちない時とか、ちょっとしか落ちない時がある。コーチ陣とかにはスプリットと言われます」とのこと。
球速が戻った今、課題はこの落ちる球種になっているようだ。「そうですね、やっぱり自分は落ち球がなかったんで、『曲がり球だけだったら、ちょっとしんどいな』とコーチにも言われる。フォーク苦手だったんすけど、ここに来て、フェニックスから急に落ち始めて。1年目、2年目と比べて、投げる瞬間だけ力を入れ始めることを意識し始めてから、少しずつ真っすぐとフォークが良くなってきました」と21歳は自身を分析する。
話を聞いた日はブルペンに入る予定はなかったが「ヒジの張りもなかったし、コーチにはいつも『投げ過ぎ』と言われていたので10球だけ」午後の自主練で投げ込んでいた。
フォークの進化に手応えを感じている一方、高校時代に多投していたスライダーは“停滞”しているのだという。「球が速くなってコントロールできなくなってきた」というのがその理由だ。
「曲がらない時が増えてきて、まだちょっと使えないなって。ただ、スライダーも決まった時は『これや』というのがある。ちゃんとコントロール出来るようになってきたら、ヒジや肩に一番負担がかからないボールだと思っている。カウント球で使えたら、楽にピッチングできると思います。でも、やっぱ今はコントロールできないっていうのが課題。本当、曲がる時は曲がる。めっちゃ曲がるんすよ」
こう声を弾ませた右腕は、「球が速くなってから、真っすぐだけで押せるっていうのを少しずつ感じてきた。これまでが50だとしたら70ぐらいまでは来ているかなと。一軍の中継ぎも先発もだいぶ層が厚いので、そこに入るのは難しいのかもしれないですけど、自分の頑張り次第で変わってくるかなと」と一軍への道筋を語った。
「(コーチ陣から)『スピード出そうと思わなくていいから』っていうのはずっと言われいて、自分でも球のキレだけを意識して、それが今のいい感じにつながっています」と充実ぶりを口にした前。変化球やコントロールの精度が向上すれば、それだけ一軍も近づく。182cmの長身に甘いマスクの持ち主なだけに、ブレイクすれば山崎颯一郎とともに人気が出るのは間違いない。このキャンプでは山崎颯のグローブを使っていたが、影響を受けている部分も大きいようだ。
同期の宮城大弥、紅林弘太郎はすでに一軍の主力選手になっている。前にも3年目の飛躍を期待したい。
取材・文●どら増田
津田学園高時代は最速152キロを計時し、甲子園に出場。U‐18日本代表にも選ばれた逸材に、球団はかつて山本由伸がつけていた背番号43を与えた。だが、プロ入り後はフォーム改造などに悩み、球速も低下してしまっていた。
昨シーズン終了後、フェニックス・リーグ参加を経て高知での秋季キャンプに参加した前は、鞭のようなミット音を響かせていた宇田川優希の横で投球。さすがに宇田川には劣るものの、春に見た時とは明らかに違う投球を見せていた。
「あとは離すリリースの瞬間だけだと思う。もっと持てるなと思ったところがあったので。(握りは)ほぼ一緒っすね。ほぼ真っすぐに寄せた握りで、フォークボール投げたりしてるので、真っすぐよりちょっと強く振るって感じの意識でやっています」と説明する。落ちる球は「多分、僕はフォークだと思っているんですが、落ちない時とか、ちょっとしか落ちない時がある。コーチ陣とかにはスプリットと言われます」とのこと。
球速が戻った今、課題はこの落ちる球種になっているようだ。「そうですね、やっぱり自分は落ち球がなかったんで、『曲がり球だけだったら、ちょっとしんどいな』とコーチにも言われる。フォーク苦手だったんすけど、ここに来て、フェニックスから急に落ち始めて。1年目、2年目と比べて、投げる瞬間だけ力を入れ始めることを意識し始めてから、少しずつ真っすぐとフォークが良くなってきました」と21歳は自身を分析する。
話を聞いた日はブルペンに入る予定はなかったが「ヒジの張りもなかったし、コーチにはいつも『投げ過ぎ』と言われていたので10球だけ」午後の自主練で投げ込んでいた。
フォークの進化に手応えを感じている一方、高校時代に多投していたスライダーは“停滞”しているのだという。「球が速くなってコントロールできなくなってきた」というのがその理由だ。
「曲がらない時が増えてきて、まだちょっと使えないなって。ただ、スライダーも決まった時は『これや』というのがある。ちゃんとコントロール出来るようになってきたら、ヒジや肩に一番負担がかからないボールだと思っている。カウント球で使えたら、楽にピッチングできると思います。でも、やっぱ今はコントロールできないっていうのが課題。本当、曲がる時は曲がる。めっちゃ曲がるんすよ」
こう声を弾ませた右腕は、「球が速くなってから、真っすぐだけで押せるっていうのを少しずつ感じてきた。これまでが50だとしたら70ぐらいまでは来ているかなと。一軍の中継ぎも先発もだいぶ層が厚いので、そこに入るのは難しいのかもしれないですけど、自分の頑張り次第で変わってくるかなと」と一軍への道筋を語った。
「(コーチ陣から)『スピード出そうと思わなくていいから』っていうのはずっと言われいて、自分でも球のキレだけを意識して、それが今のいい感じにつながっています」と充実ぶりを口にした前。変化球やコントロールの精度が向上すれば、それだけ一軍も近づく。182cmの長身に甘いマスクの持ち主なだけに、ブレイクすれば山崎颯一郎とともに人気が出るのは間違いない。このキャンプでは山崎颯のグローブを使っていたが、影響を受けている部分も大きいようだ。
同期の宮城大弥、紅林弘太郎はすでに一軍の主力選手になっている。前にも3年目の飛躍を期待したい。
取材・文●どら増田
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