「バシーン!」「ナイスボール!」
投手が目一杯の力でボールを投げ込み、捕手のミットを叩く。そのミット越しに伝わるボールの感触に受けた捕手が大声で返し、投手の気分を乗せて行く――。
テレビなどのキャンプ情報でよく見かけるブルペンの景色、中日の二軍キャンプ・読谷村でもそれは変わらない。今年は本格的に投手転向を果たした根尾昂や、地元出身のドラフト1位ルーキー・仲地礼亜も読谷組。連日多くの報道陣やファンがブルペンに熱視線を送り、各投手の投球も熱気を帯びている。
そうした活気にあふれた時間が終わると報道陣やファンが去り、ブルペンは静寂に包まれる。そんな別世界の中で一人、黙々とシャドーピッチングを繰り返す男がいた。
【PHOTO】ドラゴンズ2軍沖縄キャンプは、ドラ1ルーキー仲地礼亜投手の出身地、読谷で実施中! 5年目右腕・梅津晃大。彼もまた、この中日・読谷キャンプから「巻き返しを狙う男」のひとりだ。
2018年ドラフト2位指名を受け、東洋大から入団。翌2019年、故障で出遅れたものの夏場に一軍デビュー。その年に4勝を挙げ、期待の若手として注目される。しかし、その後は思うような結果を残せないシーズンが続くことに。
「今年こそは」と意気込んだ昨年、一軍キャンプでスタートした梅津は、第2クールのブルペンで早くも226球を投げて見せた。同じ時にブルペン入りしていたエース柳裕也の224球を上回り、当日のニュースにも取り上げられていた。
「それくらい状態が良かったんです。あれはもう決意というか、絶対にローテーションに入ってやろうという強い気持ちとアピールもあって。その思いが強く出たのがあのブルペンでしたね」
やらなきゃいけない年だった。そうキッパリ言い切った梅津の言葉からは、全く後悔は感じられない。しかし、その強い思いに自らの右肘は悲鳴を上げた。3月にはトミー・ジョン手術。強い決意で臨んだ2022年は開幕前に終わってしまった。
投げたいのに投げられない。そんな歯痒い日々を梅津は逆に好機と捉えた。投球フォームだけでなく、トレーニングや食事面、そして治療やケアなども含めて、徹底的に自分のピッチングと向き合った。
「この1年投げられなくて、本当に落ち込んだりとか、このまま終わってしまうんじゃないかと時折思ってしまうこともありました。本当に苦しかったですね。でも1年間、自分がやりたいことを何一つ余すことなくできたと思っているので、この1年間の自分を褒めてあげたいですね」
8日にはブルペンで捕手を座らせた投球を見せた梅津。着実に実戦復帰へのステップを踏んでいる印象はあるが、焦りは禁物と自らに言い聞かせる。
「今は8割程度まで来ていると思っていますが、この8割から10割に行ったりまた戻ったりと、そこがトミー・ジョン手術をした人は難しいところなんです。状態がいいからといって、飛ばしすぎてもダメですし、ゆっくりやりすぎても、復帰に時間がかかってしまう。上げていくところでも抑えて行かなきゃいけない部分もあるので、すごく難しい時期に入ってきているかなと思います。全力で投げる日もあるけど、投げたらしっかり休んだりとか、押したり引いたりしていきたいなと思います」
全力でボールを投げること以外にもできること。リハビリ過程でも突き詰めて来たそのひとつがフォーム固めだ。ひとり黙々とブルペンで行なうシャドーピッチング。そこでは、撮影された映像が遅れて再生される機器が設置されており、1回ごとにモニターで自らの姿を確認していた。
「自分の感覚とのズレを映像で確認し、直していく感じです。意識していることは、テイクバックでの肘の位置、右膝、左膝・・・ほとんど全部になってしまうんですが、特にとなると右肘の位置ですね。僕は癖で肘が下がってしまうので、そこを肩と並行に。そこが意識する中ではランキング1位ですね」
苦しい時期もあったが、その時期を乗り越えたからこそ見えたものもある。あとはそれを証明してみせるだけだ。
「みんなが試合で経験し、成長して行ってる間に、僕も自分の能力を上げる練習を1年間やってこれたので、そういう意味では必要な1年でした。野球から1年間離れているけれども、野球を一番やっていた1年なのかなと思います」
秘めた決意を持ちながらも、読谷村に詰めかけたファンの声援には、必ず笑顔で答えていた。その笑顔を今季、バンテリンドームでも数多く見せてくれることを期待したい。
投手が目一杯の力でボールを投げ込み、捕手のミットを叩く。そのミット越しに伝わるボールの感触に受けた捕手が大声で返し、投手の気分を乗せて行く――。
テレビなどのキャンプ情報でよく見かけるブルペンの景色、中日の二軍キャンプ・読谷村でもそれは変わらない。今年は本格的に投手転向を果たした根尾昂や、地元出身のドラフト1位ルーキー・仲地礼亜も読谷組。連日多くの報道陣やファンがブルペンに熱視線を送り、各投手の投球も熱気を帯びている。
そうした活気にあふれた時間が終わると報道陣やファンが去り、ブルペンは静寂に包まれる。そんな別世界の中で一人、黙々とシャドーピッチングを繰り返す男がいた。
【PHOTO】ドラゴンズ2軍沖縄キャンプは、ドラ1ルーキー仲地礼亜投手の出身地、読谷で実施中! 5年目右腕・梅津晃大。彼もまた、この中日・読谷キャンプから「巻き返しを狙う男」のひとりだ。
2018年ドラフト2位指名を受け、東洋大から入団。翌2019年、故障で出遅れたものの夏場に一軍デビュー。その年に4勝を挙げ、期待の若手として注目される。しかし、その後は思うような結果を残せないシーズンが続くことに。
「今年こそは」と意気込んだ昨年、一軍キャンプでスタートした梅津は、第2クールのブルペンで早くも226球を投げて見せた。同じ時にブルペン入りしていたエース柳裕也の224球を上回り、当日のニュースにも取り上げられていた。
「それくらい状態が良かったんです。あれはもう決意というか、絶対にローテーションに入ってやろうという強い気持ちとアピールもあって。その思いが強く出たのがあのブルペンでしたね」
やらなきゃいけない年だった。そうキッパリ言い切った梅津の言葉からは、全く後悔は感じられない。しかし、その強い思いに自らの右肘は悲鳴を上げた。3月にはトミー・ジョン手術。強い決意で臨んだ2022年は開幕前に終わってしまった。
投げたいのに投げられない。そんな歯痒い日々を梅津は逆に好機と捉えた。投球フォームだけでなく、トレーニングや食事面、そして治療やケアなども含めて、徹底的に自分のピッチングと向き合った。
「この1年投げられなくて、本当に落ち込んだりとか、このまま終わってしまうんじゃないかと時折思ってしまうこともありました。本当に苦しかったですね。でも1年間、自分がやりたいことを何一つ余すことなくできたと思っているので、この1年間の自分を褒めてあげたいですね」
8日にはブルペンで捕手を座らせた投球を見せた梅津。着実に実戦復帰へのステップを踏んでいる印象はあるが、焦りは禁物と自らに言い聞かせる。
「今は8割程度まで来ていると思っていますが、この8割から10割に行ったりまた戻ったりと、そこがトミー・ジョン手術をした人は難しいところなんです。状態がいいからといって、飛ばしすぎてもダメですし、ゆっくりやりすぎても、復帰に時間がかかってしまう。上げていくところでも抑えて行かなきゃいけない部分もあるので、すごく難しい時期に入ってきているかなと思います。全力で投げる日もあるけど、投げたらしっかり休んだりとか、押したり引いたりしていきたいなと思います」
全力でボールを投げること以外にもできること。リハビリ過程でも突き詰めて来たそのひとつがフォーム固めだ。ひとり黙々とブルペンで行なうシャドーピッチング。そこでは、撮影された映像が遅れて再生される機器が設置されており、1回ごとにモニターで自らの姿を確認していた。
「自分の感覚とのズレを映像で確認し、直していく感じです。意識していることは、テイクバックでの肘の位置、右膝、左膝・・・ほとんど全部になってしまうんですが、特にとなると右肘の位置ですね。僕は癖で肘が下がってしまうので、そこを肩と並行に。そこが意識する中ではランキング1位ですね」
苦しい時期もあったが、その時期を乗り越えたからこそ見えたものもある。あとはそれを証明してみせるだけだ。
「みんなが試合で経験し、成長して行ってる間に、僕も自分の能力を上げる練習を1年間やってこれたので、そういう意味では必要な1年でした。野球から1年間離れているけれども、野球を一番やっていた1年なのかなと思います」
秘めた決意を持ちながらも、読谷村に詰めかけたファンの声援には、必ず笑顔で答えていた。その笑顔を今季、バンテリンドームでも数多く見せてくれることを期待したい。