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侍ジャパン

WBC優勝とワールドチャンピオン――2つの「頂」を目指す吉田正尚の決意<SLUGGER>

節丸裕一

2023.02.18

レッドソックスのキャンプ地で汗を流す吉田。09年以来のWBC優勝に貢献できるか。(C) Getty Images

レッドソックスのキャンプ地で汗を流す吉田。09年以来のWBC優勝に貢献できるか。(C) Getty Images

 1月の沖縄。青空のもと、まぶしいぐらいの陽射しの中で、吉田正尚はバットを振り続けていた。普通よりも近い距離から、1球1球を少し短い間隔、早いテンポで投げてもらう。MLBの打撃練習を意識したものだ。じっと見つめる「チーム吉田」と呼ばれる若手選手たちを前に快音を響かせた。

 吉田が打ちこんでいたのはMLBの公式試合球。今季からプレーするレッドソックスから大量に送られてきたという。

「温度とか湿度によっても違うのか、寒い時期は特に飛ばないらしいですね。打ってみても日本のボールと比べたら飛ばないです。打感は違います。」それでも日を追って、少しずつ打球が飛ぶようになってきたという。

 史上最強とも言われる今回の侍ジャパン。その中で、吉田正尚の選出は、一部から驚きを持って受け止められた。

 2018年から5年連続で打率.320以上をマークし、20年と21年は2年連続でパ・リーグ首位打者に輝いた。打撃成績の総合的な指標ともいえるOPSは5年連続で.950を上回る。実績は文句なし、選手間や評論家からの評価もすこぶる高く、侍ジャパンには欠かせない主力の一人だが、何しろこのオフにポスティングシステムを利用してレッドソックスへの移籍が決まったばかり。WBC過去4大会を振り返っても、MLB移籍1年目で日本代表に選出された例はない。

「メジャーリーグもそうですけど、WBCも僕の夢だったんで、出場したい思いはずっと強く持っていました。実際に移籍が決まっても、僕の中でWBCへの思いはまったく変わらなかったんで」 

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 5年9000万ドルという金額は、メジャー1年目の日本人野手としては過去最高額。レッドソックスは全米屈指の人気球団でファンが熱く、メディアも厳しい。自身にかかる期待と責任の大きさは十分に理解しているだけに、1年目のスプリング・トレーニングを途中で抜けるリスクを感じないわけがない。それでも出場したいと思わせるWBCの魅力は何なのか。

「野球の国別世界一決定戦というところですね。やっぱり世界のナンバーワンを獲る戦いだと思うので、出たいという思いを栗山(英樹)監督に伝えました」

 子供の頃から日本のプロ野球もメジャーリーグも見てきた吉田。そのなかで多くのメジャーリーガーの凄さを感じ、惹きつけられた。とりわけ、吉田の1つ歳上で10代のうちに全米のスーパースターになったブライス・ハーパー(フィリーズ)には「カッコイイ」「好き」という素直な思いがあった。

 吉田のインスタグラムのアカウントはbh_masataka34。ハーパーのイニシャルとナショナルズ時代の背番号34を入れている。オリックス入団時から「メジャー好き」「メジャー志向」というイメージを持っていたファンも多い。

「でも、日本のプロ野球も好きでした」という吉田は、過去のWBCは日本代表を応援しながら見てきた。「第1回からそうですけど、イチローさんはじめ錚々たるメンバーが日の丸を背負って、国を代表して戦っている、というのがシンプルにカッコイイと思っていました。とくに第2回大会の最後(韓国との決勝戦)のイチローさんの決勝打はハッキリ覚えています」
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