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侍ジャパン

「ダルビッシュに立ち向かったことが財産になる」――ライブBPでメジャーの大エースと対戦する“意味”。WBCは甘くない<SLUGGER>

氏原英明

2023.02.22

ダルビッシュ(左)が渡米した当時、村上(右)はまだ中学生。<br />
16歳差のメジャーリーガーから得られる経験値は計り知れない。写真:梅月智史

ダルビッシュ(左)が渡米した当時、村上(右)はまだ中学生。
16歳差のメジャーリーガーから得られる経験値は計り知れない。写真:梅月智史

 今合宿の主役には失礼な言い方になるが、本番へ向けてのいいトライアルになったのではないか。

 侍ジャパンのWBC直前合宿第2クール初日は、ダルビッシュ有(パドレス)がライブBP(実戦形式の打撃練習)に登板。村上宗隆(ヤクルト)ら、NPBの実力派たちを相手に投げ込んだ。

「テレビで見ていた人だったんで、まさか自分が打席に立てると思ってなかった。本当に幸せを感じながら打席に立ってました。風がいい感じに吹いていたので、乗ってくれたかなと思う。球も力強くて、すごい良い球たっだんで、打てて良かった。思い出になりました」

 ダルビッシュが投じた4球目のツーシームをバックスクリーンに運んだ村上はそう振り返った。

 観客はどよめき、「公開処刑を食らって悲しかった」とダルビッシュも苦笑いしたシーンが、この日のハイライトだった。

「真ん中高めに浮きましたけど、あの球を……そんなに簡単にはメジャーのバッターでも打てないので。それをしっかり芯でとらえてる。本人は『風です!』と言っていましたけど、ちゃんと捉えてはいたなと思います」 

 ダルビッシュはたまたまのホームランではないと説明。村上にとっても、この対戦は貴重な時間になったのは間違いない。ただ、それは、“ダルビッシュを打った”という事実ではなく、メジャーリーガーの球を見られたということだ。
 
 2013年と17年のWBCにおいて侍ジャパンの壁になってきたのが、アメリカに舞台を移した準決勝のバッティングだ。メジャーリーガーの速くて強い球、そして、動くボールに苦心するというのがこれまでのパターンだった。

 前回大会の準決勝アメリカ戦で、侍ジャパンの主砲・筒香嘉智がライトに放った大飛球が急失速したシーンを覚えている人もいるだろう。3大会ぶりの優勝を狙ううえでは、乗り越えていかないといけない大きな壁だ。

 打てなくてもスモールベースボールで勝ちに行こうとした大会もあったが、合わせるだけのバッティングでは連打が必要不可欠。しかし、WBCはそう甘くはない。

 そこで今大会、栗山監督はホームランを打てるメンバーを揃えた。

 日本からは昨季56本塁打の村上を始め、3度のホームランキングを獲得している山川穂高、5年連続30発の岡本和真(巨人)ら。そこにメジャーリーガーの大谷翔平(エンゼルス)、鈴木誠也(カブス)、吉田正尚(レッドソックス)も加えた。

 メジャーリーガーは置いておいても、村上ら日本のスラッガーたちが、アメリカに舞台を移してからいかに打ち勝っていくかはキーになるだろう。

 山川と岡本には日米野球の出場経験があり、すでにメジャーリーガーと対戦してはいる。だが、「かなり昔の話なんで、あまり覚えていないです」と声を揃える。とはいえ岡本は、以前のように苦しむばかりではないとも語っている。

「確かに、日米野球でメジャーの投手と対戦していましたね。でも、あの時とは自分の中の引き出しは全然違うと思うので、同じようにはならないと思います。今から対策を練っているというわけではないですけど、しっかりと振っていく中で合わせていけたらと思います」

 もちろん、NPBに所属する外国人にも、メジャーリーガーに匹敵する投手は存在する。だから、村上は「初めて対戦するという感覚にはならないと思う」と話す。しかし、これまでのWBCにおける戦いぶり、あるいはNPBでは敵なしだった日本人選手たちが軒並みメジャーの舞台で苦しんでいる姿を見ると、そんな甘い壁なのだろうかという気もしてくる。
 
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