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MLB

日本の“強み”が出た周東佑京の積極走塁。メジャーでタブー化しつつある「スモールベースボール」はむしろ活かすべき【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.02.27

終盤で見せた決死の走塁で勝ち越し点を生んだ周東。この“足のスペシャリスト”がもぎ取った1点が勝負を決めた。写真:梅月智史

終盤で見せた決死の走塁で勝ち越し点を生んだ周東。この“足のスペシャリスト”がもぎ取った1点が勝負を決めた。写真:梅月智史

 日本の“強み”が出た場面だった。

 2月26日に行なわれるソフトバンクとの壮行試合で、侍ジャパンは2対2で最終9回を迎えていた。来る3月に開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を想定すれば、延長戦にもつれ込めば、1死二塁からのタイブレーク方式となる。勝ち越し点が是が非でも欲しい局面だった。

 もっとも、この日の日本は拙攻続き。8回までに10個と残塁の山を築いてしまっていた。ゆえに機転を利かせた積極果敢な攻撃が求められた。

 どうにかしてチャンスを――。そんな空気が漂っていたなかで、風穴を開けたのが、2番の周東佑京(ソフトバンク)だった。

 1死無塁からレフト前ヒットで出塁した背番号9は、続く源田壮亮(西武)への初球で「勇気というか、タイミングが合ったなかでいけた」と盗塁を敢行。相手捕手・谷川原健太の悪送球を誘って一気に三塁まで進んだのである。

 これに後続が奮起。「僕が何とか前に飛ばせば点が入る展開だったので、食らいつきました」という源田がライト前にタイムリーヒットを放って勝ち越しに成功した日本は、さらに相手の悪送球の間に三塁まで進んだ源田が、松原聖弥(巨人)の犠牲フライで生還。見事に試合の趨勢を定めた。

 電光石火の攻撃でソフトバンクを破った日本。これは栗山英樹監督が日本ハム時代から標榜してきた「卒のない野球」が見事に現れた形と言っていい。とりわけ“足のスペシャリスト”と称される周東の盗塁から好機を演出したのは、本大会に向けても、好材料と言える。
 
 そんな日本の“スモールベースボール”は、野球の本場では「時代遅れ」と言われるのかもしれない。アメリカやドミニカ共和国の選手たちが集うメジャーリーグでは、「フライボール革命」に象徴されるようにパワーを利した野球が主流だ。そのなかで盗塁や犠打は減少の一途をたどっており、球団によってはタブー化されつつある。

 だが、1点が勝負を分ける短期決戦においては、強みとなりえる。実際、第1回大会で日本を初代王者に導いた王貞治氏(ソフトバンクの球団会長兼特別チームアドバイザー)は、「どうしても日頃から日本だけでやっていると、メジャーでやっている選手はすごく見えちゃうんだけど、実際にはそんなに差はない」とし、こう論じてみせた。

「我々の時は、どうしてもスモールベースボールという形になった。でも、いざ試合が始まれば、そんなに派手な試合はできないですよ。短期決戦はね、どうしても投手力の勝負になると思う。そういった部分では、そこに長打力がある選手がいれば、相手投手の失投かなんかは見逃せなければ、大きいですよ」

 3大会ぶりのWBC制覇を目指す日本。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)や村上宗隆(ヤクルト)、山川穂高(西武)といった強打の選手を活かす意味でも、本大会で「スモールベースボール」が活きれば、悲願の世界一はグッと近づくはずだ。

取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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