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高校野球

あまりにも甘い「1週間500球」の球数制限ルール。高校野球の指導者は思考を変えられないのか

氏原英明

2019.12.04

当時、金足農高に所属していた吉田輝星(日本ハム)は、地方大会から甲子園の準決勝まで全試合を一人で投げた。写真:朝日新聞社

当時、金足農高に所属していた吉田輝星(日本ハム)は、地方大会から甲子園の準決勝まで全試合を一人で投げた。写真:朝日新聞社

 日本高校野球連盟が来春のセンバツから球数制限を導入することを決めた。先立っての「投手の障害予防に関する有識者会議」の答申を受けてのもので、ついに高校野球の歴史が動く。

 昨今、甲子園大会や地方大会における登板過多問題は深刻化していた。2013年のセンバツで1試合234球を投げた安楽智大(済美/現楽天)や昨年夏、地方大会から甲子園の準決勝まで全試合を一人で投げた吉田輝星(金足農/現日本ハム)などが話題となり、新たな改革へ進むべきか否かの議論が噴出していた。

 その中で、昨年12月に新潟県高野連が独自で「1試合100球の球数制限を実施する」と発表。これに、日本高野連がストップをかけた代わりに「有識者会議」を設置することとなって今回の流れまで結びついている。新潟県の行動力が一つの契機なり、高校野球界が改革の一歩を踏み出したことは歓迎したい。
 
 とはいえ、有識者会議や高野連が導入を決めたルールの有効性については疑問を抱かざるを得ない。同ルールの主な概要は1週間で1人の投手が投球できる総数を500球以内に制限し、同一大会での3連戦を回避する日程を設定する(雨天などで日程変更の場合は例外)などだ。

 これには元巨人の桑田真澄氏などの球界内の評論家をはじめ、球界外からも否定的な意見が多く「1週間500球以内の規定はあってないようなもの」という指摘は的外れではないだろう。

 なぜなら、この規定に引っかかるのは、先の安楽や吉田ら異常な登板をした数例しかなく、大きな改革に踏み切ったとまでは言えないからだ。

 ただ、この決定を聞いた時にまず感じたのは「決断できない」日本高校野球連盟に対しての憤りではない。「これが今の高校野球界の限界なのだろう」という残念な想いだ。

 日本高野連の肩を持つつもりはないが、世間のイメージほど決定事項を強制的するような団体ではない。不祥事などには厳しい措置をとることはあるものの、現会長の八田英二氏も口にしているように「調整機関」としての意味合いが強い組織だ。

「野球界の発展のため」という強い願いを持った人がいなくはないだろうが、彼らに常にあるのは地方高野連から吸い上げた意見をすり合わせることだけで、世界のジュニア世代の実情を把握し、子供たちの将来や日本高野連のあるべき姿を視野に入れることなど、ほとんど不可能な集団とも言えるのだ。

 今回のような問題が起きた時には「有識者会議」を開いて意見を乞うしかない。それは、彼らに知識がないからに他ならない。

 つまり、この度の「1週間500球」は現場の理解を得るための調整であり、裏を返せば、高校野球の現場にいる人間たちの思考が「この程度」だということでもあるわけだ。
 

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