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高校野球

あまりにも甘い「1週間500球」の球数制限ルール。高校野球の指導者は思考を変えられないのか

氏原英明

2019.12.04

 同有識者会議のメンバーの一人であるスポーツ整形外科医の渡邉幹彦氏が、この夏、筆者も同席したトークイベントの中で、こんな苦しい胸の内を吐露している。

「スポーツ整形医の見地から、私の意見を言わせてもらっています。これくらいがいいのではないかという球数の提案もしますけど、そうした時に反対意見として必ず言われるが『投げずに育てることができるのか。それがあるなら、それを提示してください』と」

 何とも意識の低い指導者がいたものだと思うが、その人とは世間から「名将」と称えられている人たちなのだから、どうにもできない。

 高校野球の現場指導者の健康問題への意識の希薄さで記憶に新しいのが、今年、韓国で開催されたU-18ワールドカップだ。

 佐々木朗希(大船渡高/ロッテ)奥川恭伸(星稜高/ヤクルト)、西純矢(創志学園高/阪神)宮城大弥(興南高/オリックス)ら高校生トップが世界一を目指したこの大会では球数制限ルールが適用されていたが、WBCよりも遥かに緩いルールの中、日本代表は西が大会で唯一3連投をこなした。それも、救援・先発・野手としての出場をミックスしたものだった。他にも、宮城が先発前日にリリーフ登板するなど、永田裕収監督は球数制限内に収めていればどう起用しようが自由だと言わんばかりの起用を繰り返していた。

 本来、高校野球のトップクラスが務めるべきU-18代表の監督がこのような起用をしたという事実は、永田監督の資質云々ではなく、高校野球界の主流の考え方がこの程度なのだという証左であろう。

 これほど登板過多が世間を騒がせているのはなぜなのか。また、世界のジュニア世代の育成において、どのような方針が敷かれているのか、なぜそうしなければいけないかを理解できていないのだ。
 
 今夏の甲子園が終わった時、球数制限のルール化がない中での最後の大会であることが予想された。今年4月に発足された同有識者会議がルール化へ向けて動いているのは明白だったから、ともすれば、秋以降は新ルールを想定したチーム作りが必要とされた。来春のセンバツ、来夏に向け、これまでと同じことをしていてはいけないと、指導者たちが考えてもおかしくはなかった。

 ところが、各地区の秋季大会が始まって、報道を通して伝わってきたのは、一人の投手が数試合の完投をしているというニュースだった。完投させることを否とは思わないが、制度化された時にどう投手を運用していくか、そのテストをしているようには見えなかった。

「1週間で500球以内の球数制限」しかルール設定できなかったことと、U-18W杯での起用法、そして、秋季大会での実態は、今の高校野球の指導者の思考を明らかにしていると言えるだろう。

 来春のセンバツから実施する新ルールは3年間を試用期間にするという。

 言わば、今回の甘いルールは、現場の指導者たちの準備期間であるとともに、最後通告とも言えるだろう。

 何より変えなければいけないのは、現場の指導者たちの意識。

 変わらないのであれば、さらなるルールの厳格化が求められる。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。

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