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「野球ぐらいで落ち込むな」ダルビッシュ有らの“気遣い”を意気に。不振だった村上宗隆を支えた人の力【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.17

ようやくセンター方向への強い当たりが飛び出した村上。その“らしい”打撃には本人も手ごたえを口にした。(C)Getty Images

 23歳のスラッガーのバットからようやく快音が響いた。3月16日に東京ドームで行なわれたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝のイタリア代表戦で、日本代表の村上宗隆(ヤクルト)は5回裏に値千金のタイムリーツーベースを放ち、9対3で勝利したチームに貢献した。

 今大会では苦闘が続いていた。宮崎での春季合宿から「最高とは言えない」と語り、芳しくないコンディションのまま、本大会を迎えた背番号55はとにかく打てなかった。1次リーグ4試合でのヒットはわずかに2本。打率も.143と低迷し、代名詞でもある本塁打もゼロ。そこにNPB史上最年少で三冠王となった昨季の打棒は見る影もなかった。

 意外にも焦りはなかったという。時に「今は結果を求めないでほしいなって思っています」とメディアに語った村上は、己の感覚に磨きをかけた。打撃映像を見返して、タイミングの取り方から体重移動など打席内での動作に微調整をし、試行錯誤を繰り返した。

 そうした日々の中で村上の胸には"先輩たち"の声も響いた。チーム最年長のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)はメディアに「野球なので、そんなの気にしていても仕方ないですし、人生の方が大事ですから。野球ぐらいで落ち込む必要はない」と説いた。そうした周囲の気遣いには、悩める主砲も「皆さんがそうやってくれているのは分かっていた」と意気に感じていた。
 
 そして迎えたイタリア戦。負けたら終わりの大一番で村上は1次リーグから務めてきた4番を外され、5番で先発に起用された。おそらく栗山英樹監督は、かねてから「4番を打ちたい」と公言してきた当人の気持ちは重々理解している。そのうえで現状を鑑みて、チームの結果と天秤にかけたなかで、打順を入れ替えたのだろう。

 村上にも指揮官の意図は伝わっていた。

「負けたら終わりですし、監督の考えで僕らもそう動くしかない。栗山監督もどういう打順が勝つために一番なのかを色々考えて、僕に声も掛けてくれました。チームとしても4番が固まるともっといいチームになると思う。そう意味では悩ませてしまったというところで、後悔じゃないけど、もっとしっかりしないといけないなと」
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「打てる根拠」があったタイムリーツーベース