誰よりも4番にこだわってきた。だからこそ5番起用に燃えた。初回の第1打席に2死一。二塁で凡退していたなかでの第3打席だった。無死一、二塁の好機で打席に入った村上は、相手4番手のビニー・ニットーリが投じた外角低めへの148キロのストレートを強振。本人が「僕の調子が良いときに出る」と言うセンターオーバーの長打となった。
初球を見事に捉えた。やや甘く入ったストレートであったために、軽々とうったように見えなくもないが、打席内では工夫をしっかりと凝らしていた。「打つ、打たないは結果」と語る村上は「打てる根拠があったので、積極的に行った」と強調した。
「軸足とか身体の動かし方だったり、タイミングの取り方だったり、色んなとこで考えた。そのなかで上手くピッチャーに入っていけるという感覚があった。ここまではなかなかピッチャーに入りに行けなかったというのがあったので」
自信をのぞかせた村上。いまだ本塁打はないが、待望の一発は、次なる舞台となるマイアミで飛び出すのか。23歳の若武者は、こう言葉を残してもいる。
「色んな感情がありながら、久々に苦しみも味わいながらやった。本当に人の力って凄いなというか、やりがいがあるなと感じた」
周囲の支えを受けながら、とにかく感覚にこだわって、熟考を重ねてきた村上。ようやく“覚醒”の兆しが見えてきた。
取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST)
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