高校野球

【センバツ】 “継投策”がズバリ的中の英明。智弁和歌山を破った3投手のマネジメント「強打者に対してビビらずに」

氏原英明

2023.03.20

英明は、3投手で智弁和歌山打線を抑えた。左から寿賀、下村、百々。写真:梅月智史

 1回戦にしては贅沢すぎる好ゲームだった。

 大会第2日の第3試合は昨秋四国大会の王者・英明が3-2で強豪・智弁和歌山を下し2回戦進出を決めた。

「どこからでも長打が出てくる、点が取れるバッターばかりなのですごく怖かったです。よくピッチャーが踏ん張って投げてくれたなと思います」

 決勝打を放った捕手の中浦浩志朗は振り返った。

 英明が巧みだったのは3人の投手陣をうまく使い切ったことだった。

 先発の下村健太郎は右サイドからのキレのあるストレートと変化球をうまく投げわける軟投派のピッチャーだった。強打の智弁和歌山に対して下村の投球がまずこの試合のハイライトだった。

 ストレートを低めに集め、一方で、ストライクゾーンに100キロに到達するか否かの超遅球を思い切って投げ込んだのだった。

 中浦は話す。

「智弁和歌山打線はまっすぐに強いというか、振り遅れない練習を普段からしていると思ったので、そこを逆手に取ったというか。遅い球でどんどん攻めていった。ヒットになることもありましたけど、3番の青山(達史)選手や中塚(遥翔)選手が一番のバッターなので、二人を抑えられたのがよかった」
 
 ストレートは比較的ボール気味に投げることが多く、一方で、チェンジアップはストライクになるから打線は手を出さざるを得ない。バッテリーの巧みな配球が強打を封じ込めたのだった。ヒットこそ打たれたものの、ポテンヒットばかり。思い切り振らせなかったことが勝因だろう。

「強打者に対してビビらずにしっかりインコースを使うことを作戦として考えていた。打たせて取ることが自分の持ち味。それが結果として出せることができたのが良かったです」

 そう振り返ったエースの下村は6回を8安打1失点に抑える快投劇で、先発の役割を見事に果たした。とくに英明が見事だったのは継投策だ。下村だけで強打の智弁和歌山打線を抑えるのではなく、投手陣を巧みに使い切った。

 試合は6回に先制したものの、その裏に反撃を浴びて同点。すると、英明の香川純平監督は7回には下村に代打を送り勝負に出たのだった。代打は成功しなかったものの、積極果敢な選手交代は試合を動かした

「迷いはなかったですね。前半、相手の反応が苦労しているような感じだったんで、これは行けるところまで下村で行こうと思ったんですけど、相手のバッティングが変わってきていた。ただ7回の場面で試合に勝っていたら下村を交代させるのは勇気がいったと思いますけど、同点だったので、勝負をかけました。勝つなら、粘り強く戦って終盤勝負と思っていたので、持っているものを全て出せたと思います」
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