贔屓目を抜きにしても、凄まじい試合展開だった。現地時間３月20日（日本時間21日）にフロリダ州マイアミで行なわれた日本代表とメキシコ代表によるワールド・ベースボール・クラシック（WBC）の準決勝だ。

　終盤までもつれこんだ大接戦を制する一打を放ったのは、日本のスラッガーが見せつけた意地だった。

　９回裏、メキシコの守護神メキシコの守護神ジオバニー・ガジェゴス（セントルイス・カーディナルス）と対峙した侍打線は、先頭の大谷翔平（ロサンゼルス・エンジェルス）がヘルメットを放り投げて二塁に駆け込む気迫の二塁打で出塁。さらに吉田正尚（ボストン・レッドソックス）が四球を選んで、無死一、二塁のチャンスを演出する。

　ここで打席に立った村上宗隆（ヤクルト）。この日は４打数無安打（３三振）で「バントも頭をよぎった」という23歳のスラッガーだが、「ムネ、任せたぞ」と栗山英樹監督の言葉を意気に感じて打席に入ると、カウント１-１から151キロの４シームを強振。鋭い打球をセンターへとかっ飛ばし、値千金のサヨナラタイムリーを放った。

　崖っぷちから起死回生を遂げたサムライたち。その姿に史上初の日系人プレーヤーとして活躍をしてきたラーズ・ヌートバー（カーディナルス）も、ただただ驚きを隠さず、チームメイトたちに賛辞を送った。

　試合後にMLB公式ネットワークチャンネル『MLB Network』のフラッシュインタビューを受けた25歳は、「本当に説明のしようがない。感情が狂ってるんだ」と興奮気味に率直な想いを打ち明けつつ、「この日本代表の一員になれて本当に幸せだと思った」と続けた。
  　ただ、試合終盤の粘りについては「日本の野球はどんな形でも生き残って勝つ。それが彼らのメンタリティーさ」と振り返るヌートバーは、「誰も負けるなんてことは考えてなかった。だから絶対に倒せると思ってたよ」と断言。日本で学んだ“不屈の精神”を語った。

　さらに米スポーツ専門局『FOX Sports』でもフラッシュインタビューに応じたヌートバーは、「僕の胸には“ジャパン”という誇りが宿っている。だから、ああいう試合展開でも諦めるような馬鹿な真似はしない」と強調。そして、コメンタリーとして居合わせたアレックス・ロドリゲス（元ニューヨーク・ヤンキース）とデイビッド・オルティス（元レッドソックス）といったメジャーリーグのレジェンドに、こう力強く語って見せるのだ。

「彼らはいつだって心に熱い炎と強いメンタルを持っている。このチームは本当に特別なチームだ」

　熱く日本の野球が何たるかを語ったヌートバー。現地時間３月21日に迎えるアメリカとの決戦では、切り込み隊長として成長を遂げてきた彼から目が離せない。

構成●THE DIGEST編集部

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