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侍ジャパン

「人生の方が大事」絶不調でも際立ったダルビッシュ有にこそMVPを。“オープンマインド”で変えた代表の在り方

THE DIGEST編集部

2023.03.28

決して芳しい状態ではなかったダルビッシュ。それでも彼が今回のWBCに参戦した意味は計り知れない。(C)Getty Images

決して芳しい状態ではなかったダルビッシュ。それでも彼が今回のWBCに参戦した意味は計り知れない。(C)Getty Images

 世界が熱狂したワールド・ベースボール・クラシック。侍ジャパンが“野球大国”アメリカ代表を破って成し遂げた14年ぶり3度目の世界一は老若男女問わずに多くの日本人が歓喜し、熱狂した。試合中継の視聴率がほぼすべて40%以上を叩き出したのは、昨年11月に行なわれたカタール・ワールドカップに勝る注目度の高さの表れと言えよう。

 そんな日本代表の世界制覇から少し時間が経った。そこで今回の代表チームを改めて振り返ってみた。すると、筆者の頭の中で真っ先に浮かんだのは、ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)の存在だった。

「今回のチームは“ダルビッシュジャパン”と言ってもいいくらい。自分のことはさておいて、チームのため、野球のため、将来のため……今、僕が多くを語るつもりはありませんが、いつかきちんとみなさんにお伝えしたい」

 これは栗山英樹監督が準々決勝のイタリア戦後の記者会見で語った言葉だ。2月17日に始まった宮崎合宿から通して見ると、指揮官の言葉は決して大げさではない。

 筆者は大会MVPに輝いた大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)と同じ、あるいはそれ以上にチームにとって欠かせなかったのは、ダルビッシュだと考える。彼がグラウンド内外で与えた影響力は、それほどまでに大きかったのだ。
 
 自身の状態は決して芳しいものではなかった。グラウンド上では3試合に登板して防御率6.00、WHIP1.17と精彩を欠いた。本人が「難しい」と語ったように開幕前の春先の調整は百戦錬磨の右腕にとっても決して容易ではなかった。宮崎でも肌寒さの残った今年はなおさらだった。

 実際、栗山監督も36歳のベテラン右腕の不調は感じ取っていた。大会後の3月27日の記者会見では「調子が上がらなかったのは間違いない」と指摘している。それでも実働11年のメジャーキャリアを培ってきたベテランの見識や実力は、世界一を目指すうえで絶対に欠かせない。ゆえに「本当に申し訳ない」「勘弁してくれ」と謝るしかなかった。

 そんな指揮官の想いをダルビッシュは汲み、行動に移した。所属するパドレスからの許可が下りた影響はあったが、メジャーリーガー組で唯一、宮崎合宿から侍ジャパンに帯同。「友だちと思って接すること。年齢とか気にしていない」とオープンな姿勢で自らが磨いてきた技術と知識を惜しみなく、NPBに所属する若手投手たちに伝授した。

 いわば大スターであるダルビッシュからワールドクラスのスキルを学んだ選手たちも驚きを隠せなかった。山本由伸(オリックス)が「すごい野球のことを考えている人だなと話をしていて思います。本当に野球に対する熱の注ぎ方が本当にすごく深い。あれだけ才能のある方であるのに、それでもここまでもめちゃくちゃ努力をされている」と語る。
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