現地４月５日、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平が、敵地T・モバイルパークで行なわれたシアトル・マリナーズ戦に「3番・投手兼指名打者」で先発出場した。打者では2打数1安打1打点、投げては6回８奪三振、1失点。チームも４対３で逃げ切り、大谷は今シーズン初勝利を挙げた。

　二刀流スターは、この試合でまたひとつ史上初の記録をMLB史に刻んだ。今季から導入された新ルール『ピッチクロック』の違反を投打両方で取られる事態に見舞われたのだ。

　投球では、初回に４番カル・ラリーに１球目を投じる前に宣告され、１ボールを取られた。この回は１点でしのいだ大谷だが、イニング後にベンチへ戻る際、フィル・ネビン監督と水原一平通訳とともに球審に確認した。

　のちに米放送局『ESPN』によると、同監督はパット・ホバーグ球審から「時計が残り8秒になったらピッチャーはいつでも好きな時に投げられるが、その前にバッターはボックス内で準備完了の合図をしなければならない」と言われたそうだ。

『ピッチクロック』は試合時間短縮のため、走者なしの場合には投手はボールを受け取ってから15秒以内に投球動作に入らなくてはいけない。大谷の場合は、まだ残り時間はあったが、打者が構えていないうちにボールを投げようとしていたことがペナルティとみなされたようだ。球審から大谷らに対しても、打者が打席に完全に入ってからモーションに入ることが必要で、一度完全にモーションを止めてから投球するよう説明された。

　さらに大谷は、２対１とエンジェルスが１点リードした6回の第3打席。マリナーズの２番手マット・ブラッシュと対峙した時にもピッチクロック違反を宣告された。打者は残り8秒までに打席で構えていなければならないため、大谷は1ストライクを取られたのだ。この打席の大谷は結局四球で出塁したが、１日に２度もピッチクロック違反となる珍事だった。
  　二刀流での同日ピッチクロック違反は、現地メディアでも話題沸騰のようだ。米日刊紙『USA Today』は「ショウヘイ・オオタニが、今度はピッチクロック違反でMLB史にさらなる名を刻んだ」と伝えた。

　同メディアは「エンジェルスの二刀流スターが、メジャーリーグの歴史を塗り替えるように、水曜日にマウンドとプレートでピッチクロック違反の餌食になった」と新ルールの”違反者”として、大谷の名が刻まれたと記した。ネビン監督は初回のイニング後に３者で話し込んだ場面について「ショウヘイはただ、セットポジションが他の選手と少し違っている。（審判の）パットに説明しようとしていただけだよ」と補足した。

　米老舗スポーツメディア『Bleacher Report』も大谷のピッチクロック違反に反応。同メディアは「オオタニはきっと、水曜日のマリナーズ戦は忘れたい歴史になってしまった」と思わぬ違反となった大谷へ同情のような記事を配信した。

　同メディアは「エンジェルスのスター選手は、メジャーリーグで初めて投手と打者の両方でピッチクロック違反の処分を受けた選手となった。2回目は、選手が打者の間にプレーを再開するために与えられる30秒の間に準備が整わなかったためだ」と６回の違反シーンを説明した。

　記事を配信したスコット・ポラックス記者は「エンジェルスにとって幸いなことは、ピッチクロックが原因でオオタニがゲームを支配するのを止めなかったことだ」と言及。「彼は投手として6回を投げ自責点1、8奪三振。打者としては2打数1安打1打点、2四球を記録した。エンジェルスを勝利に導くには十分な内容だった」と投打での活躍を高く評価した。

　またひとつ、MLB史に二刀流伝説を刻んだ大谷。今シーズンもこの男の一挙手一投足から、やはり目が離せない。

構成●THE DIGEST編集部

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