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シャーザーの“異物使用騒動”は審判団の招いた“ミス”だった!? 元MLB投手が糾弾「アルコールを使えば粘着性が残る」

THE DIGEST編集部

2023.04.21

問題となった試合でチーフクルーを務めていたクージー氏(右)に、真っ向から食い下がったシャーザー(左)。彼に下された退場処分は依然として波紋を広げている。(C)Getty Images

 大投手に下された"予期せぬ"ジャッジが波紋を広げた。現地4月19日に行なわれたロサンジェルス・ドジャース戦で、マックス・シャーザー(ニューヨーク・メッツ)が不正投球で退場処分を受けるというショッキングな事件が起きたのである。

 過去3度のサイ・ヤング賞受賞投手であるシャーザーは、2回終了後に審判からロジンと汗でベトついた手を洗うように指示される。これを受け入れた38歳のベテランは「マッチオフィシャルの目の前」(試合後の本人談)で手洗いを済ませるも、3回のマウンドに立つ際にもう一度手を洗うことに加え、ロジンのべたつきが付着したグローブを変えるよう申し渡される。

 不満げな表情を浮かべながらも再び指示を受け入れたシャーザーは、再びMLB職員の監視の下、アルコールで手を洗い、グラブも変えて4回のマウンドに立とうした……がしかし、過去2度にわたって粘着性物質使用で選手を退場としているフィル・クージ氏をクルーチーフとした審判団は納得せず。ついには退場を言い渡したのである。

 当然、ペースを乱されるような指示を受け入れてきたシャーザーは憤慨。身振り手振りを交えて「待ってくれ! これはロジンだ!」と猛抗議。しかし、試合後に「手のべたつきはそれまでよりも酷くなっていた」と明かしたクージー氏と、「べたつきのレベルはルールが導入された過去3年間で最悪なものだった」と語ったダン・ベリーノ球審がベテラン投手の反論を受け入れるはずはなく、処分が覆らなかった。
 
 騒動から一夜が明け、MLBはシャーザーに対して10試合の出場停止処分を発表。これに対して「子どもたちの命に賭けて(異物は)使っていない」と強く否定していた当人も「中立的な仲裁人の前に出られると思っていたが、そうではなかった。裁定はMLBを通して行なわれるものだった」とコメント。権利のあった異議申し立てをせずに処分を受け入れる意向を示した。

 奇しくも、取り締まりが始まった21年以降で粘着性物質使用で退場となった過去2例と同じようにクージー氏によってシャーザーの"有罪"は確定した。そのために一部のメディア関係者やファンからは、「審判によって基準が曖昧なのではないか」という批判が噴出。現行の取り締まりに関するさまざまな議論が交わされた。

 そもそも現ルールにおいて、ロジンの使用は不正ではない。グラブやユニフォームに付着させる行為と大量の使用のみ禁止されている。ゆえに「異物」とするかどうかは各審判の判断によるところが大きく、明確な規制はない。もはや科学的証拠がなければいけないのではないかとも思えてくる。

 そうした不正投球規制の実態が浮き彫りになりつつあるなかで、今回のシャーザーの一件を「審判団のオウンゴールだ」と断じた元メジャーリーガーがいる。
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アルコールの使用は「ベタつきを残すだけ」!?