侍ジャパン

工藤は実績十分でも前時代的な采配に一抹の不安...侍ジャパン新監督候補たちの「長所」と「短所」<SLUGGER>

出野哲也

2023.06.06

WBC優勝を成し遂げた栗山前監督。後任者へのしかかる重圧は並大抵のものではない。(C)Getty Images

 先のWBCで日本代表を世界一に導いた栗山英樹監督の退任が、5月30日に正式に決定した。一時は続投するのではとの観測もあったが、絶対に負けられないという厳しいプレッシャーに晒される日々を、何年も続けるのは難しいのだろう。

 当然、3年後の2026年に予定されている次回大会の指揮官は誰になるのか注目が集まっている。現段階で名前の挙がっている候補者を中心に、プラス面とマイナス面を考えてみよう。

▼工藤公康
〇:日本一5度の実績
×:オールドスタイルの采配

 今のところ最有力候補の一人と見られている前ソフトバンク監督。就任1年目の15年、さらに17年からは4年連続で日本シリーズ制覇。19、20年は2年続けて巨人に4タテを食らわせ、短期決戦での強さに定評がある。「俺が悪い」が常套句だった栗山ほどではなくとも、自身を棚に上げて選手を非難するタイプではなく、選手からの信望も得られそうだ。

 その一方で、レギュラーシーズンでは7年間で4回優勝を逃していて、巨大戦力を率いた結果としては物足りない。それ以上に気になるのが采配面。出塁率がそれほど高くない選手を1、2番に置いて送りバントを多用していた点は、スモール・ベースボールを好む人には受けが良いかもしれないが、近年の世界的な趨勢には逆行するものだ。"世界標準"に合わせた上でWBC優勝を勝ち取った栗山野球から一歩後退となっては意味がない。
▼秋山幸二、落合博満
〇:ともに実績は豊富
×:現場から離れすぎ)

 こちらも日本シリーズを複数回制した経験を持つ。工藤の前にホークスを指揮していた秋山は、人間性でも申し分なく選手が「勝たせたい」と思える指揮官。13年の第3回大会では有力な監督候補と見られ、NPBからの就任要請もあったが、現役監督であることなどを理由に固辞した。

 しかしながら、最後に監督として指揮を執ったのは14年。ブランクが長すぎ、勝負勘などが鈍っている可能性は低くない。工藤と同じように、采配がオールドスタイルだった点も気になる。

 落合も09年の第2回大会の監督候補に挙げられ、断っていた。監督を退任したのは11年と空白は秋山以上に長いが、それでも中日の黄金時代を築いた勝負師には一部で根強い待望論がある。近年もYouTubeで独自の野球観を披露して多くの視聴者を集め、監督時代を描いたノンフィクションもベストセラーになるなど、世間の注目度は非常に高い。

 一方で、「とにかく勝つことがすべて」という考えで、栗山のように選手の気持ちに寄り添い実力を引き出そうとするタイプではないし、現在のトップ・プレーヤーたちとの縁も薄い。今年で70歳、本人も今さら火中の栗を拾うつもりはないのではないか。
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