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プロ野球

メッツのエプラーGMが西武の渡辺GMと対談!WBC世界一をもたらした侍たちの「困難を克服する力」の吸収に意欲<SLUGGER>

氏原英明

2023.06.08

渡辺GM(左)と握手を交わすエプラーGM(右)。コロナ禍で停滞していた両球団の提携関係が再び前進した。写真:球団提供

渡辺GM(左)と握手を交わすエプラーGM(右)。コロナ禍で停滞していた両球団の提携関係が再び前進した。写真:球団提供

 5月某日、メッツのビリー・エプラーGMが来日し、業務提携を結んでいる西武の渡辺久信GMと話し合いを行った。

 西武とメッツの関係は2019年から。「チーム育成の強化」「ボールパーク化と施設活用」「スポーツの振興強化」の3点を基軸に業務提携を結んだ。相互で学び合うことで、より高みを目指していこうとの狙いだ。業務提携と聞くと、選手の往来を目的としたもの、たとえば「メッツから選手が獲れるのか」、あるいは「西武の選手が引き抜かれてしまうのではないか」と考えがちだが、実情はどんな意味が込められているのだろうか。

 渡辺GMはこう語る。

「コロナ前にコーチを1人派遣して、本当は1年間、勉強してもらおうと思っていた。ところが、コロナがあって1ヵ月足らずで帰国することになり、止まっていたと言うのが正直なところ。コロナも収束したので、これからはより強固にやっていこうということでお話をさせてもらいました。お互いがWin-Winの関係になるのが理想ですね」

 当初は、人を派遣して学びを得ていこうというのが西武の狙いだった。アメリカで実際に行われている指導の現場を体験し、西武の育成システムをより強固にしたいと考えていた。

 一方のエプラーGMもこう語る。
 
「メッツの選手たちに、NPBの選手に多くみられるような『Resiliency』(困難を克服する力)を植え付けたいと思っている。最高の力を発揮できる時とできない時があるものだが、『Resiliency』がある選手は安定して力を発揮できる。そして、長期間にわたる成功にもつながるからだ」

 業務提携の大事なことは、両者の良い部分を吸収することである。WBCで侍ジャパンが優勝したことにより、日本の投手育成、あるいは選手たちのメンタルの強さに、アメリカでもより注目が集まりつつある。エプラーもその点を念頭に置いていたという。

 とはいえ、「進んでいるのはアメリカの方」と、渡辺GMはメッツから学ぶことに貪欲だ。2020年、前年に引退したばかりの大石達也(現二軍コーチ)をメッツ傘下1Aチームに派遣したのもそうした思いからだ。

 渡辺GMは話す。

「コーチングなどいろんな部分において、アメリカの方がちょっと進んでいるのが現状。ピッチャーや野手に関しても、データ活用やバイオメカニクスの部分でも。データをしっかり可視化すると見えてくるものがあり、それに基づいたトレーニングが行われている。うちも専門家をスタッフに入れてアプローチをしているので、そういう部分でもこれから情報交換ができたらと思っている」

 日本野球の中には、悪い意味で保守的な人もいる。それこそアメリカ式の練習方法や、渡辺GMも口にしたバイオメカニクス、データを駆使した育成手法などを毛嫌いする人もいる。

 ただ、近年の西武はデータアナリストを採用するなど方針を転換してきた。渡辺GMは言う。
 
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