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プロ野球

“甲斐キャノン”以上の二塁送球タイムを叩き出した猛者も!最新データから再検証する捕手の「盗塁阻止能力」<SLUGGER>

DELTA

2023.06.16

甲斐の強肩“甲斐キャノン”の威力は球界にも知れ渡っている。だが、今季途中までの指標を見てみると、また別の選手の名前が浮かび上がってくる。写真:THE DIGEST写真部

甲斐の強肩“甲斐キャノン”の威力は球界にも知れ渡っている。だが、今季途中までの指標を見てみると、また別の選手の名前が浮かび上がってくる。写真:THE DIGEST写真部

 守備力を評価するのは難しい。中でも困難を極めるのが、求められるスキルが他のポジションと明確に異なる捕手の守備評価だ。ただ近年、MLBではトラッキングシステム『スタットキャスト』の導入により、数多くのデータが取得可能となり、捕手評価も進歩を見せている。今回はNPBの捕手の守備について、旧来とは異なるデータを用いて評価してみたい。

 捕手ならではでのポピュラーな守備指標といえば、盗塁阻止率だろう。しかし、盗塁阻止率は捕手の能力だけで決まるわけではない。どれだけ捕手の肩が強くとも、投手のクイックが遅ければ盗塁阻止は難しい。また、相手走者の走塁スキルによっても成否は変わってくる。捕手の能力を計るには、盗塁阻止率だけではデータのノイズが多すぎるのだ。

 では、捕手のみの盗塁阻止能力に注目するにはどうすればよいだろうか。その一端を表す数字として、近年計測されているのがポップタイムだ。ポップタイムとは、盗塁時に捕手が捕球してから二塁、あるいは三塁に送球が届くまでの時間を示す。いわば送球スピードである。もちろん送球スピード=盗塁阻止能力というわけではないが、投手や走者のノイズが入ることなく、捕手の能力だけを計ることはできそうだ。

 これについて、捕手ごとに今季の中央値を集計すると、以下のようになる。

▼2023年二塁ポップタイム(中央値)
1位 甲斐拓也(ソフトバンク) 1.86秒
2位 清水優心(日本ハム) 1.883秒
3位 若月健矢(オリックス) 1.884秒
4位 古賀優大(ヤクルト) 1.895秒
5位 太田光(楽天) 1.901秒
※二盗を10度以上企図された捕手を対象
 
 トップにきたのはやはり甲斐拓也(ソフトバンク)で、中央値は1.86秒。今季の盗塁阻止率ランキングでは佐藤都志也(ロッテ)、柘植世那(西武)に次ぐリーグ3位だが、やはり送球スピードは抜きん出ているようだ。

 ただ、中央値ではなく最速値で見ると、実はランク外の捕手の名前が挙がってくる。今季、ポップタイム最速を記録しているのは山本祐大(DeNA)。4月30日の中日戦で、岡林勇希を刺した送球は何と1.69秒だった。1.6秒台は年に1度出るかどうかの大記録だ。まだ知名度は低い山本だが、盗塁阻止のポテンシャルは極めて高そうだ。

 また、ポップタイム以外で盗塁阻止に関するデータを見ていこう。盗塁阻止には「これまでの評判」という要素も入ってくる。走者は「捕手がどれほどの盗塁阻止能力を持っているか」という、過去の評判からスタートの可否を判断するからだ。球界屈指の強肩と名高い捕手に対しては、自然とスタートを切るのは慎重になるし、弱肩で有名な捕手に対するスタートの心理的ハードルは低くなる。盗塁阻止率にはこうした捕手の評判が反映されないが、捕手が評判によってどれだけ盗塁を未然に防いだか、つまり「抑止力」も具体的に計ることができる。
 

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