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MLB

「家計を助けるため7歳から働き始めた」「実はネコが大の苦手」...エンジェルスに加わった心優しき男エスコバーの素顔<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.06.28

過去に20本塁打以上を5度記録しているエスコバー。故障者続出のエンジェルス内野陣の救世主となるか。(C)Getty Images

過去に20本塁打以上を5度記録しているエスコバー。故障者続出のエンジェルス内野陣の救世主となるか。(C)Getty Images

 6月24日(現地)、エンジェルスは緊急トレードでメッツからエデュアルド・エスコバーを獲得した。ベネズエラ出身のエスコバーはメジャー13年目の35歳。2011年にホワイトソックスでデビューし、ツインズ、ダイヤモンドバックス、ブルワーズ、メッツと渡り歩き、今回のエンジェルスがメジャー在籍6球団目となる。

 スイッチヒッターで、基本的には中距離打者タイプだが、19年にはDバックスで35本塁打。21年にも28ホーマーを放ってオールスターに出場している。昨季は初のサイクル安打も記録。今季も序盤は不振だったが、5月以降は打率.321、OPS(出塁率+長打率).870と調子を上げていた。

 打撃以外にも期待できるのはムードメーカーとしての貢献だ。「彼が口を開けば、誰もが耳を傾ける。チームを盛り上げるのが本当に上手い」「アメリカ人選手とラテン系選手の橋渡し役になってくれている」......これまでのチームメイトは、口を揃えてエスコバーのリーダーシップを称賛する。こうした目に見えない貢献は、プレーオフを目指すエンジェルスのようなチームではとりわけ重宝されるだろう。

 地域活動に熱心に取り組んでいることでも有名で、Dバックス在籍時の19~20年には2年連続でロベルト・クレメンテ賞にノミネートされている。長期遠征から帰ってきた翌日の午前中でも嫌な顔一つせずに小学校や病院を訪問し、チームの広報担当にとってはまさに神のような存在だった。その姿を見た他のラテン系のチームメイトも地域活動に熱心に携わるようになる例が後を絶たず、球団内では「エスコバー・エフェクト」と言われていたそうだ。
 エスコバーが慈善活動に積極的に関わるのは、自身の生い立ちとも関係している。幼い頃に父が家を出て、母が女手一つで6人きょうだいを育て上げた。家計は貧しく、夕食を食べられないままベッドに入ったこともあったという。家政婦として働いていた母を助けるべく、エスコバーも7歳の頃から仕事を始めた。靴磨きやパテオの清掃、自家製のパンを売ったりもした。そのため、学校教育は中学2年生までしか受けることができなかった。

 フィールド内外で一身に尊敬を集めるエスコバーだが、一つだけ弱点がある。それはネコ。近くにいるのはもちろんのこと、見るのもイヤという徹底ぶりで、ダイヤモンドバックス時代は特に同じベネズエラ出身のチームメイトたちからイジラレまくっていた。こっそりエスコバーに近づいて、ぬいぐるみのネコを顔にちらつかせる。そして、悲鳴を上げて逃げ回るエスコバーを見て大笑い……といった具合だ。Dバックスではこれが高じて、ぬいぐるみのネコが「ラリー・キャット」を名付けられてチームのラッキーチャームになったこともあった。

 ツインズ時代は思わぬ“災難”にも見舞われた。チームOBで、首位打者を7度獲得したかつての名打者ロッド・カルーがクラブハウスを訪れるたびに2匹のネコを連れてきていたのだ。「こっちに来てネコにさわってみろよ」とカルーに言われたエスコバーは「あなたのことを心から尊敬していますが、絶対に無理です」と頑なに首を振っていたという。ちなみにカルーがクラブハウスを訪れた時は、エスコバーが外に出ないようにカギをかけるしきたりになっていたそうだ。

 頼れるベテランとして、良きチームメイトとして、そしてムードメーカー兼いじられ役として――。エスコバーはエンジェルスの貴重な戦力となるに違いない。

構成●SLUGGER編集部
 
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