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DV事件に引退騒動、不正投球問題...MLB史上24人目の完全試合を達成したヘルマンは波乱万丈の“お騒がせ男”<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.06.29

過去2登板で計17失点と炎上が続いてたヘルマンだが、歴史に残る偉業をやってのけた。(C)Getty Images

 野球というのはつくづく不思議なスポーツだ。140年以上もの長い歴史の中で、過去23人しか記録していなかった完全試合を新たに成し遂げたのは、今季防御率5点台の、決して一流とは言えない30歳の右腕だった。

 6月28日(現地)、敵地でのアスレティック戦でドミンゴ・ヘルマン(ヤンキース)が一人も走者を出さないパーフェクト・ゲームを達成。この日のヘルマンは「すべての球種でコマンドが抜群だった」(アーロン・ブーン監督)。特に全体の半分以上を占めたカーブのキレが抜群で、アスレティックス打線は攻略の糸口すらつかめず。一塁手のアンソニー・リゾーが痛烈な当たりを横っ飛びで好捕するなど、味方も好守で盛り立てた。

 迎えた9回、地元アスレティックスファンからも大声援を送られる中、最後の打者エステリー・ルイーズを三塁ゴロに打ち取り、大記録達成。笑顔を浮かべて両手を広げるヘルマンに、チームメイトが次々に抱きついた。

 このヘルマン、これまではどちらかといえば「お騒がせ男」のイメージが強かった。2017年にメジャーデビューを果たし、3年目の19年に18勝を挙げてブレイクしたヘルマンだったが、その年の9月に恋人への暴力事件が発覚する。チームメイトのCC・サバシアが主催したパーティーに参加した際、泥酔して恋人を平手打ちし、帰宅後も暴力を振るったのだ。逮捕はされなかったものの、MLB機構から81試合の出場停止処分を受けた。
 このため、短縮シーズンとなった20年は全休。その年の7月には、インスタグラムにスペイン語で「俺は球界に別れを告げた。みんな、ありがとう」と投稿してすわ引退かと騒動になったこともあった(のちに投稿を削除し、引退も否定)。

 今季もお騒がせぶりは変わらなかった。4月15日のツインズ戦では、手がべたついていたことから不正投球を疑われ、審判に手を洗うよう通達されながらも投球続行は認められて6.1回を11奪三振。怒った相手チームの監督逆に退場処分を食らって物議を醸した。すると、5月16日のブルージェイズ戦では、今度は本当に不正投球とみなされて退場処分となり、10試合の出場停止を食らった。しかも、過去2先発は5.1イニングで計17失点と大炎上。一部では先発ローテーション降格を求める声すら出ていた。

 そんな男がドミニカンでは史上初、あの殿堂入りの名投手ペドロ・マルティネスですら成し遂げることのできなかった大記録を達成してしまったのだ。いやはや、野球というのは本当に不思議なスポーツと言うしかない。

構成●SLUGGER編集部
 
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【動画】“お騒がせ男”ヘルマンが史上24人目のパーフェクト・ゲームを達成!