プロ野球

ドラ1ルーキー・蛭間拓哉は、西武の救世主となるか? 自分と向き合い続けた2軍での日々をコーチが証言

岩国誠

2023.07.15

浦和学院→早稲田大出身の蛭間。選球眼とボールへのコンタクト力に定評がある。写真:THE DIGEST写真部

 西武のドラフト1位・蛭間拓哉。6月23日の楽天戦で一軍デビューを果たすと翌24日に初安打、そして25日に早稲田大学の2年先輩・早川隆久からライトポール際にプロ初本塁打を放ち、低迷するチームの救世主誕生かと多くのファンが期待を寄せた。

【動画】華麗なバット投げ!蛭間拓哉が早大の先輩から放った"プロ初本塁打"をチェック!

 しかし、ベルーナドームに戻った6月30日のソフトバンク3連戦。ホームでの初安打をと詰めかけたファンの前で、3試合ともスタメン出場となったが結果はノーヒット。7月14日現在、12試合に出場し37打数6安打、打率.162と苦しんでいる。

「ベルーナドームで1本打ちたいっていう力みは多少あったと思います。ちょっと力が入りすぎて打っている状態でそこが修正できていませんでした」

 気負いが体にブレーキをかける。ソフトバンク・石川柊太と初対戦となった7月2日の1打席目はそう感じさせる内容だった。制球が定まらず3ボールとなったところで投じられた真ん中付近のストレートを、打ち気を見せずに見逃し。次のストレートに振り遅れて三塁ファウルフライ。ベンチで見ていた高山久打撃コーチはこう振り返る。

「3ボールからのストレートを、打ち気を見せずに見逃してしまっていたが、それで次のボールをいきなり捉えるのは難しい。前のボールでしっかりタイミングを測っておかないと。そういう部分は経験を積み重ねて、勉強していって欲しいと思います」

 蛭間自身も「打ちにいけていなかった」と、準備不足を反省していたが、こうした経験を今後にどう活かしていくかが大事になってくる。蛭間はまだプロ1年生、模索する日々の渦中にいるのだ。

「一軍が結果を出さなければいけない場所なので、修正しないといけないことがたくさんありますし、難しい場所だなということは感じています。ただ、二軍でやってきたことが今の自分はできていない。実力不足はありますが、もう一度冷静にしっかり修正できれば打てるかなと思っています」
 
 キャンプA班(一軍)スタートだった蛭間だったが、開幕間際のオープン戦では結果を残せずファームへ。悔しさを胸にどんな時間を過ごしたのか。蛭間と向き合った小関竜也ファーム野手総合兼打撃コーチが話してくれた。

「一軍のオープン戦でストレートに差し込まれるとなってファームに来ましたが、キャンプの疲れとプロのピッチャーとの初対戦が続いて、自分のバッティングができないような状態でした。そこで『もう一回整理しよう』と話をしました」

 どんなことを話したのか。その一部を教えてくれた。

「ストレートに差し込まれるからといって、『強く、早くバットを振ればいいというものではない』ということと、『打ちにいく時に、ゼロの状態から一気に10の力で打ちに行こうとすると、バットが体から離れてしまう』ということですね」

「そのために下半身から順番に少しゆっくりスイングするとか、長いバットを持って振るとか、そういうことを練習で取り入れて、本来の自分のバッティングスタイルのいい部分をもう1回思い出してもらうようにしました」
 
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小関コーチの目には、今の蛭間がどう映っているのか