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プロ野球

ドラ1ルーキー・蛭間拓哉は、西武の救世主となるか? 自分と向き合い続けた2軍での日々をコーチが証言

岩国誠

2023.07.15

フレッシュオールスターゲームに選出された蛭間。はたしてMVP獲得なるか。写真:THE DIGEST写真部

フレッシュオールスターゲームに選出された蛭間。はたしてMVP獲得なるか。写真:THE DIGEST写真部

 蛭間のバッティングの特徴として首脳陣が評価しているポイントは「選球眼とボールへのコンタクト力」。だが、バットが体から離れてしまうと、バットの操作も難しくなり、必然的にボールへのコンタクトも難しくなってしまう。つまり、オープン戦の時は、蛭間の持ち味が消えてしまっていたというわけだ。

「入ったばかりで欠点を直そうとしてしまうと、元々持っている長所がなくなってしまう。そうなることがやはり一番怖いので、なるべくそこは消えないようにしながらも、(ストレートで)やられてしまったことについては、多少なりとも自分で補っていけるように、話し合いをしながら練習していました」

 その結果、ファームでは3割近い打率を残し、一軍再昇格を果たした蛭間。送り出した小関コーチの目には今の蛭間がどう映っているのか。

「やっぱり結果を出したいとか、いろんな気持ちがある中で、ほとんどが初めて対戦するようなピッチャーでしょうし、そういう中で相手の特徴やボールの軌道を初めて見るわけで、なかなかうまく結果が出ない部分はある」

「ただ、自分もそうでしたが、本当にひとつのヒットがきっかけに『こうやればいいんだ』っていう手応えを見つけられることがあるので、そういうふうなものが掴めるような手助けを我々コーチ陣が少しできればいいかなと思っています」

 今現在、一軍で蛭間を預かる高山コーチもこう話す。

「迷わず思いっきりやってくれたらいい。今は結果が出ないのはある程度仕方ないかと思っていますが、ベストを尽くすことは大事にしてほしいと思います」
 
 その後、なかなか結果を残せない試合が続いたが、7月9日のオリックス戦では先発・山岡泰輔を相手にプロ初の1試合2安打。特に2本目は、初球のストレートを、打球方向を意識してレフトへ放ったもので、蛭間らしい積極性とバットコントロールのうまさを感じさせるバッティングだった。

「練習ではセンター中心のバッティングと、溜めた力をしっかりボールにぶつけることを意識してやっています。すべてレベルアップしないと一軍では通用しないと思っていますが、小さくなってしまったら意味がないので、失敗を恐れずにいきたい。今はいい経験をさせていただいているので、守備も含めて課題だらけですが、悔いが残らないにしっかりと1日1日やりきりたいと思います」

 前半戦も残りわずか。その後には富山で開催されるフレッシュオールスターゲームへの出場が決まっている。

「正直、今は一軍の方がアレなので、オールスターのことはマジで考えられないというか、体がもっているかなっていう心配はあります(苦笑)。ただ、目指すところはMVP。がんばります!」

 苦しい現状を振り返りながらも、去り際には白い歯を見せた蛭間拓哉。積み重ねた経験を力に変えて、高くそびえる一軍の壁を乗り越え、チームの救世主になる日がくることを信じて待ちたい。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
いわくに・まこと/1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとWEBライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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