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プロ野球

「緊張した方が集中できるし、いい結果も出る」元沢村賞投手・金子千尋は今も“思考力”のアップデートを続ける【後編】<SLUGGER>

藤原彬

2023.08.07

7月の引退セレモニーで胴上げされる金子コーチ。通算130勝を挙げ、MVPや沢村賞も獲得する輝かしいキャリアだった。写真提供:北海道日本ハムファイターズ

7月の引退セレモニーで胴上げされる金子コーチ。通算130勝を挙げ、MVPや沢村賞も獲得する輝かしいキャリアだった。写真提供:北海道日本ハムファイターズ

 日本ハムの金子千尋特命コーチは現在、MLBテキサス・レンジャーズ留学で得た知見を日本球界へフィードバックしようと努めている。プロ18年間で磨き上げた独自の理論や哲学は、当時から接点があったアメリカからも大いに刺激を受けて、新たな野球人生の道標にもなっている。

――現役時代からアメリカのトレーニング施設を訪れていました。

 初めての海外自主トレは2013~14年のハワイでしたけど、日本人のスタッフが多かったので、そこまでアメリカ感はなかったです。その次の15~16年は施設を訪ねて、初めてアメリカ人にトレーニングを教えてもらいました。それが僕にとっては刺激的で、今までと違う感覚があり、それ以降もトレーニングはアメリカでと思いました。

――具体的にはどのような影響を受けましたか?

 少し言い方に語弊があるかもしれませんが、当時の日本のトレーニング方法はボディビルダーのような部分がありました。今日は下半身、次の日は上半身と部位を分けたトレーニングが多かったです。育成の頃はそれでいいと思います。しかし、アメリカでは基本的に一日で全身を鍛えます。それは、野球のためのトレーニングだから。僕も投げるためのトレーニングをしていたので、20代後半から30代になり身体ができあがってからは、同じ日に上も下も両方が連動する動きや、投げるために必要な動きを交えた方が身体に染み込むと考えていました。
 あとは、その選手に合ったトレーニングですね。身体の仕組みは人それぞれ違うので、全員が同じトレーニングをしても駄目です。17年からは同じ施設で毎度身体を見てもらい、前年との違いやその時の状態を考えたトレーニングを組んでもらいました。

――日本ハムに加入した18年には、ドライブライン・ベースボールにも足を運んでいます

 若い頃より少しずつスピードが落ちて、ストレートを捉えられる確率が上がっている時期でした。それに僕は空振りよりも1球で打ち取れる球を優先するタイプなので、結果的に小さく曲がる変化球の投球割合が増え始めたかもしれません。意図的に変えたつもりはありませんが、カットボールやツーシームなどの動くボールですね。

 例えば、バッティングセンターのマシーンは基本的に同じ球が来る。でも、少しタイミングがずれるだけで打者は打ち損じます。打撃投手は相手に打たせるようと思って投げるから、常に同じ球を投げようとしてくれる。つまり、打者目線で考えれば、いつも違うボールが来た方が打ちづらい。

 僕は、少しだけ曲がってストレートと違いがあればいいとだけ考えていました。そうすると、精神面でリラックスできて、本来の自分の球が投げられる。
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