高校野球

地方大会に続く「波乱」はあるか。優勝候補とダークホースの対決が続く今夏の甲子園は1回戦から目が離せない【氏原英明の2023夏の甲子園展望】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.05

8月6日からいよいよ開催される夏の甲子園。果たして全国の頂点に立つのはどの高校か。写真:THE DIGEST写真部

 8月3日、第105回全国高校野球選手権の組み合わせが決まった。

 地方大会から波乱の多かった今夏の甲子園は、果たしてどんな大会になるのだろう。2013年に初出場の前橋育英があれよあれよという間に優勝した時のような、彗星のごとき新鋭校の登場はあるのだろうか。

 波乱の大会によくあるのは、序盤戦での優勝候補の潰し合いだ。優勝を狙うようなチームは、大会を通じての投手マネジメントをあらかじめ考えて大会に臨むが、強豪校がそろう甲子園ではコロッと負けることもある。組み合わせがどう作用するかは、対戦してみるまで分からないものだ。

 例えば、「今大会でダントツの優勝候補」との呼び声高い昨夏の覇者・仙台育英は、150キロを計測する投手を複数揃えている。これは大会全体のことを考えたチーム構成だが、目先の1試合では持ち味を発揮するのを待たずして敗退……ということも、必ずしもあり得ない話ではない。

 仙台育英の初戦の相手は浦和学院だ。思い返せば13年、この2校は同じく1回戦で対戦している。この時はセンバツの覇者だった浦和学院が延長にもつれる死闘の末に、仙台育英に春夏連覇を阻まれている。今夏は逆に、浦和学院が仙台育英の夏連覇に向けて第一の壁となる形。大会全体を占う意味でも、大きな意味を持つゲームになりそうだ。

 今大会は仙台育英の他、広陵や智弁学園、慶応、履正社などの下馬評が高いが、波乱の匂いはこれらのチームにも漂う。例えば智弁学園の初戦の相手、英明も決して侮れない相手だ。
 
 昨秋は四国大会を制覇し、明治神宮大会にも出場。1回戦で後のセンバツ覇者となる山梨学院を破っている。そしてセンバツでは、初戦で21年夏の優勝校である智弁和歌山に勝利。今大会も注目のチームと言える。大会の歴代戦績はまだまだの新鋭校だけに、春の智弁和歌山に続いて夏に智弁学園も撃破するとなれば、大きなターニングポイントになるだろう。

 昨秋の明治神宮大会に出場したチームといえば、北陸もダークホースの一つだ。こちらは英明を明治神宮大会の準々決勝で倒している。初戦で当たる慶応もたかをくくっていると痛い目にあいかねないし、ここを乗り切れば逆に上位進出の目が見えてくる。

 この他、5日目第2試合の明豊vs北海の勝者も、勝ち上がっていく可能性を秘める。明豊は2年前のセンバツ準優勝チームで、ここ数年、九州では絶大な存在感を誇ってきた。ベンチ入り選手のほとんどを戦力として育て上げる川崎絢平監督の手腕も光り、注目に値する強豪校の一つだ。かたや北海は投手力が持ち味で、こちらも2017年以来の上位進出もあり得る。

 新監督で初の甲子園となる日大三、大阪入りが遅れたことで2回戦からの登場となる沖縄尚学、投手力に優れた専大松戸、そして仙台育英らの激戦ブロックに配置している聖光学院も、虎視眈々と上位進出を狙う。

 仙台育英がダントツの優勝候補と騒がれる中、どのチームが頂点に立つのか、初日から目が離せないのは間違いない。
 
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