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MLB

2年連続で二刀流選手をドラフト1巡指名する球団も――“ネクスト大谷”育成は「不可能に近い夢」から「実現可能な目標」へ<SLUGGER>

城ノ井道人

2023.08.12

二刀流選手としてドラフト1巡目指名を受けたエルドリッジは“アメリカン・オータニ”の異名をとる。(C)AP/AFLO

二刀流選手としてドラフト1巡目指名を受けたエルドリッジは“アメリカン・オータニ”の異名をとる。(C)AP/AFLO

 歴史的な活躍を続ける大谷翔平(エンジェルス)の活躍もあり、アメリカ球界では次代の二刀流選手、“ネクスト大谷”を育成しようという動きが見られるようになった。

 アメリカでは元々、大学まで投打両方で活躍する選手は多く、二刀流選手を表彰する賞(ジョン・オルルード賞)まである。それでも、ドラフト後にはどちらかに専念するのが通例だった。それが、近年はプロでも「二刀流選手」として育成することを視野に指名する例がわずかだが増えてきた。

 中でも、二刀流育成に本格的に乗り出そうとしているのがジャイアンツだ。昨年のドラフトで1巡目全体30位でコネティカット大のレジー・クロフォード、今年も1巡目全体16位で高校生のブライス・エルドリッジを二刀流選手として指名した。付け加えるならば、今年のキャンプでは18年に一塁手としてメジャーで16本塁打を放ったロナルド・グーズマンと二刀流選手としてマイナー契約を結んでいる。

 もっとも、“大谷時代”以降の二刀流育成という点では、ジャイアンツは必ずしも「ファーストペンギン」というわけではない。大谷渡米前年の2017年ドラフトでは高校生、大学生に二刀流の目玉選手がいた。高校生では、遊撃手としてもアレックス・ロドリゲス級と騒がれていたハンター・グリーンでがドラフト全体2位でレッズに指名された後に投手一本に専念。ブレンダン・マッケイはジョン・オルルード賞を史上唯一3年連続で受賞した生粋の二刀流選手で、全体4位指名したレイズが二刀流としての育成を明言した。
 当時のレイズは明らかに二刀流に興味を持って試行錯誤しており2018年ドラフト2巡目でも大学時代に投打で活躍したタナー・ドッドソンを指名して二刀流として育成している。19年には、現在はパドレスで活躍するジェイク・クローネンワースに3Aで6度のオープナーを含む7登板をさせて防御率0.00、奪三振率11.01という結果を引き出した。クローネンワースは野手としても主に遊撃を守って打率.334、10本、45打点、OPS.949の成績を残しており、数字だけ見れば二刀流選手としてかなり有望だった。

 だが、これらの試みは上手くいかなかった。マッケイは2019年にメジャー昇格を果たして勝ち星も本塁打も記録したが、その後は故障続き。ドッドソンは19年で外野守備を、21年で打席に立つのをやめ、現在は2Aで投手に専念している。クローネンワースも、19年オフのパドレス移籍以降は野手に専念。レイズ自体、現在は当時ほど二刀流育成に力を入れていない。

 だが、ここ数年の大谷の活躍で、改めて二刀流育成の機運が高まっている。二刀流は「不可能に近い夢」から「実現可能な目標」となりつつある。

 そこに乗ってきたのがジャイアンツだ。「投打で違う調整にすべて合わせることはできない。だから日々、何が上手くいって何が上手くいかないかを学んでいる」と語るクロフォードは、今季途中に1Aから1A+に昇格。打っては1試合1~2打席、マウンドでも1登板平均2イニング未満とパートタイムの感は否めないが、これはトミー・ジョン手術明けということも理由だろう。
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