プロ野球

復活した中川皓太を中心にブルペン全員で絶対的守護神の不在をカバー。キーワードは“結束力”【密着女子アナが見た巨人】

真鍋杏奈

2023.08.16

大勢を欠く中、クローザー経験もある中川の復活は心強い。写真:THE DIGEST写真部

 甲子園では連日、高校球児たちが汗を流し、必死に戦っている。仲間と笑い合い、仲間と泣き合う姿に、見ているこちらも胸が熱くなり、4年ぶりの声援も聞こえ、スタンドも含めて"結束力"を感じる。

 一方、プロ野球はペナントレースがいよいよ佳境を迎える時期であり、甲子園に負けじと熱い戦いが増えてくる。そして、巨人は今季例年以上に"結束力"を高めて戦っている。

 前半戦は菅野智之投手がコンディション不良で出遅れ、坂本勇人選手や中田翔選手が怪我で一時離脱するなど、主力を欠いた。その間、戸郷翔征投手が投手陣を牽引し、野手では秋広優人選手、門脇誠選手など若手の台頭もあり、チーム一丸となってカバーしてきた。
 しかし、まだみんなが待ちわびる絶対的守護神・大勢投手が戻っていない。大勢投手は昨季、プロ1年目で開幕からクローザーの座を任され、新人ではプロ野球最多タイ記録の37セーブを挙げ、球団では11年ぶりとなる新人王に輝いた。セーブ機会の失敗は一度だけ。「大勢に回せば安心」――誰もがそう信頼していた。

 今季は24試合に登板し、2勝14セーブを挙げていた中で、6月30日に右上肢のコンディション不良で選手登録を抹消された。ブルペンの大黒柱、クローザー不在となってしまったのだ――。

 そんな絶対絶命のピンチの中、原辰徳監督は、「全員で戦うという意識を持つことは非常に大切なこと」と、強調した。
 
 現在、"代役守護神"を務めているのが、中川皓太投手である。
昨季は腰痛のため、1年間その姿を一軍のマウンドでは見ることはなかった。今季は育成選手として再出発となり、5月15日に支配下復帰した。

 一軍に合流した頃に話を聞くと、「まだ自分では(状態は)納得いっていない。投げていくことでしか感覚は戻ってこないので、登板回数を重ねていくしかないですね。身体を気にしながら、少しずつ戻していきたい」。まだ探り探りの状態だった。

 そして、当時のチームはというと......。その少し前から"魔の8回"という奇妙な言葉が飛び交っていた。8回に魔物が住んでいるかのごとく、5月2日から6試合連続で8回に失点。スポーツ紙で"魔の8回"という見出しが躍り、ネット上でもその言葉がトレンド入りした。

 9回の大勢投手につなぐ勝利の方程式を確立できていないことがチームの課題となっていた。その中で、2019年から3年間セットアッパーとして君臨し、チームを支えてきた"8回の男"大本命の中川投手が戻ってきたことに、安堵した人は多かったであろう。

「終盤にいくにつれて難しさはあると思うけれど、特に目立ったところではないと思っている。他の回で投げるのと変わらないですよ」。本人は自分の"持ち場"について涼しげにこう語り、さすがの風格も見せていたが、一方で「逆にニュースで"魔の8回"とか言われているので、意識しちゃいましたよ。」と笑っていた。
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雰囲気も良好なブルペン陣は総力戦でバトンをつなぐ