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高校野球

継投策をめぐる各監督の戦略と思惑――3回戦以降の「投手マネジメント」から目が離せない【氏原英明が見た甲子園】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.15

仙台育英・須江監督は相手の心理を見抜いた継投を得意とする。写真:THE DIGEST写真部

仙台育英・須江監督は相手の心理を見抜いた継投を得意とする。写真:THE DIGEST写真部

 マウンドには背番号「17」――2回戦の神村学園戦。この夏、県大会ですら登板のなかった投手を起用した理由を、市和歌山の半田真一監督は次のように説明した。

「神村学園の打線を見た時に、うちの2人の投手では抑えられないなと。投手陣全員でと思って今日の起用にしました。(結果的に)甲子園初登板の2人には厳しかったのかなと思います。起用した僕の責任」
 
 市和歌山の思い切った起用はハマらなかったものの、勝つためのチャレンジとしてやるべき手を尽くしたと至極納得のいく采配だった。

 今の時代、投手マネジメントは監督の重要な仕事の一つになり、どのチームも工夫が見られる。
 
 事実、今大会で1回戦を突破した17チームのうち、12校が2回戦で先発投手の起用を変えている。同じ投手だけで戦う時代ではなくなっていることの証左だろう。市和歌山のように、格上の相手と対戦する時に思いきった手を打つのも、時代の流れと言えるのかもしれない、
 
 当然、これは球数制限のルールが制度化された影響も大きい。もともと、球数制限は故障防止の観点で導入されたものだった。制限をクリアできれば投げてもいい――そんな発想の指導者も少なくなかったが、2020年の制度設定からコロナ禍の影響などもあり、監督の考え方も大きく変わってきている。
 今大会の各校の投手マネジメントは見ていて興味深い。

 投手の起用法については答えが一つというわけではない。そのため、多くの学校が見せてくる采配に唸らされるのである。

 甲子園初勝利から2勝して3回戦進出を決めたおかやま山陽の堤尚彦監督は、1回戦の日大山形戦で3人の継投を駆使した。そのマネジメントを堤監督はこう語る。

「起用の順番は試合前に話しています。試合展開によって変わることもありますけど、基本的には『こうなったらこういう起用になるから』と伝えています。そうする理由は、代打もそうなんですが、急に出番が来ると選手が準備できていないので、いい結果が生まれない。いい準備をしてもらうためにもそうしています」
 
 ブルペンでの準備は出番が約束されていないと複数回になりがちになる。そうなると、マウンドに上がる時にパフォーマンスが落ちる場合がある。プロでも昨今はブルペンの肩作りは1、2回程度に落ち着いているが、そうするためには起用の固定化が必要になる。選手がハイパフォーマンスを発揮するためにも必要なマネジメントなのだ。以前のコラムにも書いた、土浦日大や花巻東のマネジメントも、そうした「選手の力の発揮しやすさ」を大事にしている。

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