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高校野球

最大の問題は過剰な“非商業主義”。収益拡大によって解決できる懸案も少なくないはず【西尾典文の甲子園改革案】<SLUGGER>

西尾典文

2023.08.18

大きな人気を集める一方で批判も根強い夏の甲子園。どんな改善策が考えられるだろうか?写真:THE DIGEST写真部

大きな人気を集める一方で批判も根強い夏の甲子園。どんな改善策が考えられるだろうか?写真:THE DIGEST写真部

 甲子園では連日熱戦が続いているが、毎年この時期になると多くみられるのが高野連や高校野球に対する批判だ。政府や厚生労働省からも不要不急の外出を控えるようにアナウンスされている猛暑の中で試合を行っていること、大会の過密日程、負けたら終わりというトーナメント方式、旧態依然とした丸刈りのチームが多いことなどが今年も話題となっている。良い、悪いは別として、学生の部活動でここまで注目度の高い競技はない。

 ただ、さまざまな問題点が指摘されているが、その多くは他の高校スポーツでも同様のケースが多い。インターハイは甲子園大会より過密な日程の競技もあり、猛暑の中も大会は行われている。髪型にしても、全員が丸刈りで臨んでいる他のスポーツのチームもある。
 それでも高校野球の問題点が指摘されることが多いのは、それだけ注目度と認知度が高いからに他ならない。笹川スポーツ財団が定期的に調査を行っている種目別の直接スポーツ観戦状況を見ると、あらゆる制限のなかったコロナ禍前の2018年において、高校野球はプロ野球に次いで2番目に多くの人が観戦しており、Jリーグ、Bリーグなど他のプロスポーツよりも上回っている。

 年代別に見ても若年層や高齢者だけに人気があるというわけではなく、全年代で3位以内にランクインしているのだ。コロナ禍以降は無観客で実施された大会も多く、20年の調査ではJリーグに抜かれているが、制限が解除されたことで、この夏も連日多くの観客が地方大会、甲子園に訪れている。それだけ国民的なスポーツであることは間違いなく、だからこそ批判の声も多いと言えるだろう。
 もちろんだからといって、高校野球が今のままで良いと言っているわけではない。あらゆる面で改善は必要であり、今のやり方に胡坐をかいていれば、多くの人が離れ、日本の野球界全体にもマイナスは大きくなるはずだ。

 変えるべき点はいくつもあるが、最も見直しが必要なのは過剰な“非商業主義”ではないだろうか。その元となっているのが『日本学生野球憲章』である。これは戦後間もない頃、プロ野球による過剰な引き抜き行為から大学生、高校生を守り、不当に金儲けをする存在を排除したいという目的もあって作られたと言われており、学生野球を商業的に利用しないという趣旨の文言が3ヵ所にわたって明記されている。

 これまでも大谷翔平が生徒募集の学校のCMに出演したことで野球部長が厳重注意となり、また高知商の野球部員がダンス同好会の発表会に友情出演した際に入場料を徴収するイベントだということも高野連から問題視された。どちらも“商業利用”に抵触したということだが、このように少しでも金儲けの匂いがしたら徹底的に排除するというのがこれまでの高校野球、学生野球界の常識となっているのだ。

 しかしその一方で、運営する側の懐事情が苦しくなっていることは間違いない。20年以降は甲子園大会や地方大会がコロナ禍で無観客での開催となったことで財政が悪化。21年には日本高野連だけでなく、あらゆる県の高野連でクラウドファンディングを実施している。しかし、日本高野連が1億円とした目標に対して集まった金額は1400万円弱と、達成率は寂しいものだった。

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