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プロ野球

プロ9年目で悲願の2ケタ勝利!オリックス山崎福也を変えた菊池雄星との出会い「もっとやらなきゃダメなんだ」【オリ熱コラム2023】

どら増田

2023.09.30

昨年8勝を挙げた山崎福。今季はついに念願の2ケタ勝利を達成した。写真:野口航志

昨年8勝を挙げた山崎福。今季はついに念願の2ケタ勝利を達成した。写真:野口航志

 オリックスの山崎福也が9月27日のソフトバンク戦に先発し、8回を被安打5、無失点の好投。9勝目を挙げてから“5度目の正直”で悲願の2ケタ勝利をマークした。今年で大卒9年目となる山崎福にとっては初の快挙だ。

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 ここまでの道のりはとても長かった。明治大では東京六大学No.1ピッチャーと謳われ、2014年ドラフト1位で入団。即戦力として期待されたが、本人いわく1年目は「2ケタ勝てるイメージはなかった」。実際、17先発で3勝6敗、防御率4.53に終わった。

 その年のオフ、プエルトリコのウインターリーグに参加。外国人選手を相手に内角を攻める術を身につけた。2年目のシーズンでは、当時の酒井勉投手コーチの指導で投球フォームを見直し。加えて、今では代名詞になっている「ロジンは多くつけた方がいい」というアドバイスをもらっている。

 周囲からの期待は大きかったが、チーム事情もあって先発とロングリリーフを繰り返す生活が続き、17年には2度も遠征先の試合途中に帰阪するという屈辱を味わっている。しかし、この年に菊池雄星(当時西武)との会食が実現。「雄星さんがこんなにやってるなら自分はもっとやらなきゃダメだ」という思いを抱き、練習や身体づくりへの意識が変わった。

 だが、結果が出るまでは時間がかかり、背番号を「0」に変えた18年は未勝利。20年からは背番号を11に再度変更した。この頃から身体が仕上がって来た効果もあり、ストレートのスピードが大学時代の頃と同じ水準に戻った。一時は首脳陣から「145キロはもう投げられないだろう」とまで言われていたが、145キロを超える力強いボールとスローカーブの緩急をつけた投球が定着していく。菊池に刺激を受けて始めた身体づくりが実を結んだのだ。
 21年には先発とブルペンで活躍し、キャリアハイの8勝。リーグ優勝に貢献した。昨年は勝ち星こそ5勝止まりだったものの、交流戦や日本シリーズで投打に渡り躍動。特に日本シリーズではエース山本由伸を負傷で欠く中、MVP級の活躍を見せて26年ぶりの日本一に大きく貢献した。

「今年こそ2ケタ」という気持ちで臨んだ今季は、交流戦で大活躍。スローカーブだけでなく、チェンジアップも効果的に使った配球も光り、一時は最多勝争いも繰り広げた。9勝を挙げてから足踏みが続いたが、27日の試合では6月に見られたテンポのいい投球を披露。ポストシーズンに向けての収穫という点でも大きな1勝だった。

 試合後、山崎福は「ここ最近、不甲斐ないピッチングが続いていたので、何とか今日、絶対に決めるという強い気持ちを持って、試合に臨みました。今日は全部良かったです。ランナーを出してもダブルプレーを取れたり、焦らない気持ちが出なかったところが良かったと思います」と振り返ると、バッテリーを組む若月健矢に「シーズン始まってから、この2ケタ勝利まで本当に感謝しかない」と感謝の意を述べた。

 初の2ケタ勝利については「本当にうれしいですし、勝つというのは野手の力が必要なので、周りの方々のおかげだと思っています」と満面の笑顔。ポストシーズンに向けて「最後まで頑張ります」と力強く誓った。

 中嶋聡監督や能見篤史前投手コーチなど、さまざまな人たちに見守られながら達成した2ケタ勝利。かつては「ロングリリーフをできるのは自分しかいない」と話していた時期もあったが、本音は「先発」で「2ケタ勝利」を目指していたのは言うまでもない。日本一連覇へ向け、ポストシーズンでも期待は大きい。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。

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