11月２日、オリックスと阪神による日本シリーズ第５戦が甲子園球場で行われた。オリックスは先発の田嶋大樹が７回無失点と好投、打線もゴンザレスの先制ソロなどで２点を先行するも、８回からの継投が大誤算。この回は上半身のコンディション不良などで過去２試合はベンチから外れていた山崎颯一郎がマウンドに上がるも、エラーなどが絡んで無死一、三塁のピンチを招き、近本光司にタイムリーを打たれて１点差に迫られる。

　ここで中嶋聡監督は自らマウンドに行って、移動日を挟めば４連投となる宇田川優希を登板させる。シーズン中は３連投をさせない方針（移動日を挟んでも３試合連続登板はない）を堅持していたが、短期決戦ならではの大胆な起用を決断。「ここで三振を取ってくれるのは宇田川」と、盤石の信頼を託しての投手交代だった。

　しかし森下翔太に逆転スリーベース、大山悠輔にもタイムリーと連打を浴びて、宇田川は１死も取れずに２失点で涙の降板。後を受けた阿部翔太も失点し、この回一気に６点を献上して逆転負け。日本一へ王手をかけられてしまった。

　試合後、中嶋監督はまず先発の田嶋について「本当にすごいピッチングでしたけどね。非常にいいですし、いつもでしたら（８回以降も）行っていたと思うんですけど。まあちょっと芯に当たりだしたかなと。（交代したのは）迷わずっちゃあ、迷わずです」と、交代のタイミングを説明しながら絶賛。クライマックス・シリーズでは田嶋を引っ張って失敗した経験があっただけに、早めに決断したのだろう。
  　自慢のブルペン陣が打たれてしまったが、４連投の宇田川の起用は「状態はいいと聞いていたので。まあ、相手もうまく打ちましたし、仕方がないです」と割り切っていた。

　甲子園の雰囲気は尋常ではなかったが、「雰囲気じゃなく、土の感じがなんか交流戦の時は少し違うよね、湿り方とかちょっと感じますけど」とグラウンド・コンディションに違いを感じていた様子。この日から杉本裕太郎がスタメンで復帰したが「打てればいいんでしょうけど、（試合に出られる）段階までは来たかな」とシリーズ男の今後に期待を寄せた。

　また山本由伸もベンチ入りをするなど、チームはこの日から総力戦モード。阪神に王手をかけられたのは痛いが、４日からは再び本拠地・京セラドーム大阪に戻る。「もう追い込まれたわけですから。開き直るわけじゃないですけど、２つ勝たないといけないから、なんとか頑張りたい」と前を向いた指揮官。第４戦の“湯浅の１球”から流れが完全に阪神へ傾いているだけに、オリックスが日本一になるには第６戦をドラマティックな展開で勝つ必要がある。泣いても笑っても関西ダービーによるプロ野球頂上決戦の決着は京セラでつく。

取材・文⚫︎THE DIGEST編集部