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プロ野球

オリックスと阪神の新旧対決は“旧”の阪神に軍配。古めかしくも情のある選手起用で岡田阪神が勝ち取った日本一<SLUGGER>

氏原英明

2023.11.06

 象徴的だったのはシリーズ第4戦だ。阪神は2点リードの7回に、ミスが絡んで失点を喫した。その後もピンチが続いてリリーバーを投入したのだが、次の回は9番から始まる打順。リリーバーにイニングまたぎをさせたいと考えた岡田監督は主力野手をベンチに引っ込めたのだ。

 選手の使い方が固定されているから、試合が目まぐるしく変化していく中で、厳しい起用もある。しかし、それを受け入れて前に進む力が阪神は強かったのだ。それが言い換えればまとまりという部分でもあった。

 指揮官の戦術、戦い方が根本にあり、それを元に遂行していく。個性が生きる場所を与えていくオリックスとは一線を画していたのだ。

 とはいえ、岡田監督はすべてにおいて古い考え方なわけではなかった。戦い方が古めかしいだけであって、意外に情に熱いところがある。つまり、選手の気持ちを優先するのだ。

 第7戦の先発を務めたのは青柳。今季はエースとして開幕しながら、本来の仕事をまっとうできなかったピッチャーだった。しかし、その起用理由が岡田監督らしい。

「今年の開幕は青柳で始まった。だから、最後を締めるのも青柳。そう決めていた」

 そんな想いで起用された選手は気合が入らないわけないだろう。しかも、このシリーズで青柳は1試合も登板がなかったから、コンディションが万全な状態という利点もあった。相手をスカウティングすると言う意味でもオリックス側は虚をつかれているはずだ。

 9回には、先頭からリリーバーの桐敷拓馬を投入。2死をとるとクローザーの岩崎優をマウンドに上げている。こちらも「1年間、岩崎が務めてきたから」である。
 
 働き方改革の推進で、スポーツもいろんな方面から変革の時期を迎えている。

 休養を与えること、健康面に配慮することは当たり前の時代になっている。パワハラに当たるような言動なども細心の注意を払わなければいけないのが昨今の事情だ。

 もちろん、パワハラはあってはいけないし、過重労働はありえない。野球では登板過多は見直さなければいけないし、選手の出場機会創出は指導者の課題だ。

 だからこそ、今の時代は新しい方向へと向かいつつあり、オリックスなどのようなチームが成果を上げているのもまた事実である。

 しかし、新しい時代へ向かうことは過去の否定ではない。

 新たなマインドは必要なことであるが、過去の中にも今必要とすべきものがある。それも、また事実なのだ。

 世の中の多くの物やことが新しいほうへと向かいつつある中、過去の中にも良いものがある。

 そのことを教えてくれた、岡田阪神の日本一だったのかもしれない。

文●氏原英明

【著者プロフィール】うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設。このほど、パ・リーグ特化のWEBマガジン「PLジャーナル限界突パ」を創刊した。

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