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プロ野球

41人が権利を取得しても行使は7人のみ...MLBと同じ「自動FA制」導入で球界のさらなる活性化を<SLUGGER>

出野哲也

2023.12.02

広島からFAとなった西川はオリックスに移籍した。写真:野口航志

広島からFAとなった西川はオリックスに移籍した。写真:野口航志

 11月15日、NPBはフリー・エージェント(FA)資格を持つ106選手中、権利を行使すると宣言した7名の選手を公示した。

西川龍馬(広島)
石田健大(DeNA)
山崎福也(オリックス)
平井克典(西武)
山川穂高(西武)
田村龍弘(ロッテ)※
松井裕樹(楽天)※
※=海外FA権取得

 それでは、MLBでは何人の選手がFAとなっているのだろうか。答えは「数えきれない」。なぜならそもそもFAとは、「その時点で契約がない選手」のすべてを指す言葉だからだ。

 総額5億ドル規模の契約が見込まれる大谷翔平から、引退直前の者やほとんど名前を聞いたことのない者でも、現時点で来季の契約がなければみなFA。わざわざ「宣言」などしなくとも、メジャーの試合に出場可能な26人ロースターに6年(年間172日で計算)以上登録された選手は自動的にFAとなる。さらには、6年未満でも球団から契約を更新しない「ノンテンダー」とされた選手、そして球団が保有できる40人ロースターから外れたマイナーリーガーも、全員FA扱いなのだ。

 試みに、スポーツ選手の契約情報などをまとめたサイト『Sportac』を見ると、実に700人以上。この中にはすでに事実上引退状態の者も含まれているが、日本と比べて文字通り桁違いに多いことだけはよく分かる。

 ちなみにNPBによると、今季新たにFA資格(国内・海外どちらも含む)を取得したのは計41名。もし、この41人がMLBと同じように自動的にFAとなったらどうなるだろう。
 日本ではMLBよりも長い8年を経過しないとFA資格を得られないが、それに加えて前述の通り資格の行使を宣言しないと、他球団との交渉ができない。こうしたプロセスを経る必要があるがために、FAとなることへの心理的なハードルが高くなってしまい、また当然の権利であるにもかかわらず一部のファンから「裏切り者」扱いされるという、妙な事態を招いている。宣言した選手の残留を認めないおかしな態度をとるチームもある。資格を得た時点で自動的にFAとなれば、こうした悪習もなくせるし、選手の移動が活発になってプロ野球自体が活性化するだろう。

 このオフで言うと、茂木栄五郎(楽天)は迷った末に宣言せず残留を決めたが、今季は8試合の出場に終わるなどイーグルスでは存在感を失いつつある。それでも、つい2年前まではパンチ力と選球眼を兼ね備えた遊撃手として活躍し、まだ30歳の働き盛り。補償の必要なBランクだった点も宣言を踏みとどまらせる要因だったと思われるが、そうであっても自動的にFAになっていたら、内野の攻撃力を強化したいチームは声をかけやすかったと思われる。

 そうして茂木が移籍したら、楽天は代わりに上本敬司(広島)を補充し、カープは穴埋めに柴田竜拓(DeNA)を......といった具合に、連鎖的に多くの動きが生まれていたのではないか。市場に出る数の選手が増えればそれだけ多くの選択肢が生まれるわけで、各球団はそれぞれのニーズに合った補強ができやすくなる。
 
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