プロ野球

「こっちに来て野球が楽しい」安田尚憲がプエルトリコで過ごした充実の日々は、3年目の飛躍の土台に

中島大輔

2020.01.06

入団時から大きな期待をかけられてきた安田。その才能は同世代の村上宗隆(ヤクルト)にも引けを取らない。写真:朝日新聞社

 イースタンリーグで本塁打、打点の二冠に輝いた2019年シーズンオフ、安田尚憲はさらなる飛躍を目指し、アメリカ自治領プエルトリコのウインターリーグに参戦した。

「こっちに来て良かったと思います。本当にすごくいい経験になっていますし、野球もうまくなっていると思うので」

 188cm、95kgの恵まれた体格に大きな可能性を秘める20歳は、日本から遠く離れたカリブ海の異国で好成績を残した。主に三塁手としてプレーし、15試合で43打数15安打、打率.349。本塁打こそゼロだったものの二塁打を5本放ち、11四球を選んでOPS.938を記録している。

 その数字以上に目についたのが、スペイン語を学んでチームの輪に溶け込もうとする姿勢だ。通訳を介さず、単語をつなぎながら直接コミュニケーションを図っていく。チームに得点が入れば、歓声を上げながらハイタッチして喜びを分かち合った。

「こっちに来て野球が楽しいなと思いますね。プロである以上、野球が毎日楽しいわけではないと思うけど、でも好きでやっていることなので。そういう気持ちをもう1回思い出したというか」
 
 プエルトリコのレベルは2Aと3Aの間、日本で言えば1.5軍程度とされる。その中で安田は高打率を残した一方、自身の課題を明確に把握していた。昨年12月6日の試合前、彼はこう語っていた。

「日本のピッチャーから打っていることが多くて、プエルトリコのピッチャーはまだ打てていないことが多いですね」

 一般的に日本の投手は投球動作の中でゆっくり間を取って投げてくるのに対し、プエルトリコでプレーする中南米やアメリカの投手はテイクバックが小さい。昨季まで阪神で活躍したランディ・メッセンジャーのようなイメージだ。

 しかもプエルトリコ・ウインターリーグのピッチャーは日本人投手のようにきれいな回転のフォーシームではなく、"動く球"を投げてくる。国際大会のたびに日本人打者が苦しむ問題に、安田もプエルトリコで直面させられていた。

「日本のように『1、2の3』のタイミングで投げてこないで、『1、2、3』というタイミングで来る。だから日本より始動のタイミングを早くしないといけないのはありますね。少しずつ対応できるようになってきたけど、動くボールへのアジャストはまだまだなので、しっかりやっていきたいです」

 どうすれば、日本と異なるタイプの投手を打てるのか。安田は周囲の打者を観察し、明確な違いに気づいた。日本の打者はトップを作るまでに足を大きく使って予備動作をすることが多い一方、ラティーノたちはすぐにトップで構えて軸回転で打っていく。
 
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